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「日本の国技でアメリカの国技に挑戦したい」大学1年でアマ横綱に…相撲界“無敵の21歳”が「実戦未経験」でも本場の名門大へ編入できたワケ<アメフト転向表明>
text by
一野洋Hiroshi Ichino
photograph byJIJI PRESS/Xリーグ
posted2023/07/21 17:05
体一貫の大相撲から防具をつけたアメフトの世界へ。アメリカNCAA1部の大学への編入を決めたアマチュア横綱の花田秀虎
また、力士だったゆえの独特の課題も残っているのだという。
「相撲は足の裏以外が着いたら負けなので、手をついたら『負けた!』と思ってしまい、反射的にプレーが止まってしまう。そこで力を抜いてしまうのがダメなところですね」
フィールドに倒れても黒星がつかないアメフトでは、手をついて転んでもすぐに立ち上がり、相手に向かっていく癖を体に覚えさせないといけない。
相撲にあってアメフトにない「武器」とは?
その一方で、相撲に慣れ親しんできた花田だからこそ備えている、アメフト選手にはない武器もある。
「腕を使った『前さばき』の技術はアメフトには無いと思うので、そういう特殊な力はあると思います」
相撲は、膝でも肘でも基本的に関節が伸びきってしまうと力が入らずに簡単に負けてしまう。逆にアメフトの技術としては、肘を伸ばしきって「相手をパンチするイメージ」と教えられることが多い。前さばきのやり方が体に染みついている花田からすれば、「下からおっつけたらめちゃくちゃ楽なんですよ」という。この相撲独特の技術は、アメフトでも大きなアドバンテージになると考えている。
また、相撲を通じて鍛えられたフィジカル面の自信も、カナダで身長2m近い大柄な外国人と対峙して確信に変わったという。
「海外の選手は身長も高くて大きいと言われますが、僕が相撲の時に戦った選手と比べるとまだ小さいほう。目が慣れているというか、そういう戦い方に慣れているのはすごく有利だなと思いました」
花田は力士時代に、現在大相撲の東前頭6枚目で身長204cm、体重185kgの北青鵬とはしょっちゅう戦っていたという。日本人と比べると破格のサイズの外国人選手を相手にしてもまったく気後れしなかったのには、そういった経験値が活きている。
CFLコンバイン時の動画では、重戦車のような外国人選手に当たり負けせず、スピード感あふれる得意のスピンムーブで他を圧倒していた。
とはいえ、本場NFL選手の凄さを端的に言い表すなら「デカくて、速くて、強い」という言葉につきる。
花田と同じポジションの選手であれば、身長190cm以上、体重100kgオーバーの体格でも、50mを5秒台で駆け抜けるモンスター級の身体能力を持っている。相撲からアメフトへの異例の転向。そしてアメフトの世界最高峰のリーグであるNFL入りを目指すというのは、傍から見れば無謀な挑戦かもしれない。しかし、ポジティブ思考の花田はこれから待ち受けている過酷な試練もプラスにとらえている。