「本当にワクワクしています。英語でコミュニケーションをとって、授業を受けて……というところに不安はあります。だけど、自分の知らない世界がどんどん広がっていくと考えると、楽しみの方が大きいですね。NFLを目指すという目標を考えると、NCAAは通過点。アメリカでも一握りのトップ選手しか入れない世界だけど、向こうでは初年度から活躍してNFLを目指したい」

　語学については、「まだまだ全然です。少しコミュニケーションを取れるぐらいで、急にサイドラインから早口で言われたら、多分まだ聞き取れないレベル」だが、「今は本当に切羽詰まった気持ちで勉強しています」と8月前半の渡米に向けて鋭意、励んでいる。

「相撲に恩返しをしたいという気持ちがある」

　相撲界を離れても、花田自身は「一番目標にしているのは千代の富士」と語るなど角界へのリスペクトは強い。

「僕は相撲に育ててきてもらっていて、そこに恩返しをしたいという気持ちがある。相撲をやっていたというバックボーンが、自分に自信を与えてくれているので」

　6月にはかねてより親交がある幕内力士の落合改め伯桜鵬から着物の帯をプレゼントされた。その伯桜鵬は史上最速タイとなる所要３場所で新入幕を果たすと、名古屋場所での勝ち越しも決めた。

　かつては横綱・武蔵丸や大関・小錦のようにアメフト出身の有力力士が角界で活躍した時代もあった。もし花田の挑戦が実を結べば、今度は日本の相撲出身者たちがアメリカの国技で活躍する未来図もありうるのかもしれない。

　NCAA1部校の1チームあたりの出場選手登録人数は、平均で約100人と言われている。それに所属の131校を乗じるとおよそ1万3000人が試合に出場可能な人数となる。

　全米の高校生フットボーラーは100万人程度と言われている。

　フットボールスキルが体に染みついている本場アメリカの高校生でもNCAA1部校でロスター入りできるのは約1％という狭き門だ。しかも実戦経験がほぼゼロの日本人となれば、その確率はさらに厳しいものになるだろう。コロラド州立大3年生に編入する花田が選手登録可能なのは、最大で2年。その間にエリート集団との熾烈な争いを勝ち抜き、NFLのスカウトにアピールしないといけない。

　それでも21歳のアマチュア横綱は、相撲で育んだ経験と技術に加えてフットボールの本場でスキルを研鑽し、日本人未踏のNFL入りという大きな夢に向かって歩を進めている。

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