野球クロスロードBACK NUMBER
大阪桐蔭“じつは甲子園逃しかけた”あの最強世代「ヤバいヤバい」「終わった…」当時メンバーが明かす“9回2死無塁から逆転”のウラ側
posted2023/07/24 11:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
JIJI PRESS
高校野球集大成の夏。
地方大会では毎年、甲子園をも凌ぐ激戦が生まれる。全国的な強豪校が覇権を争う激戦区となれば、なおさらのことだ。
大阪桐蔭対履正社。
9度の全国制覇を誇る当代随一の名門と、2019年に悲願の日本一を果たし、2度のセンバツ準優勝と実績豊かな名門同士の激突は、地方大会トップクラスの「ライバル対決」として高校野球ファンの心を疼かせる。
なかでも珠玉とされるゲームが、2018年の北大阪大会準決勝だ。
5年前の夏…大阪桐蔭の絶体絶命
この一戦が今も多くの人間の記憶に刻まれている理由。それは大阪桐蔭の、絶体絶命の死地から史上初となる2度目の春夏連覇への道が開かれたからだった。
両チームともにスコアレスと膠着した試合は、7回から急激に動き出す。
表の攻撃で大阪桐蔭が3点を先取。その裏に1点を返されると、8回には先発の根尾昂が履正社打線に掴まり3-4と逆転を許した。
根尾をリードした正捕手の小泉航平によると、この時はまだ敗北を意識するほどの動揺はチームになかったのだという。
「雰囲気がよかったんで、みんな『いける』と思っていました。僕自身も相手に打たれましたけど悔いのない配球をしていましたし、『根尾で打たれたんだからしょうがないな』っていう感じでした。でもあの時は、さすがに『ヤバい』って思いましたけど」
あの時。小泉のみならず、ベンチ全員の背筋が凍ったのが9回だ。
9回2アウトランナーなし「終わった、と」
この回、先頭で9番バッターの代打、俵藤夏冴がセンター前へのヒットで出塁し、ノーアウトで1番の石川瑞貴が打席に入る。
初球。バントの構えをした石川が高めのボールに手を出すと、打球が力なくピッチャー前に上がった。チャージをかけていた相手サードが捕球するとすぐさまファーストへ送球し、2アウトランナーなし。同点のチャンスから一転、大阪桐蔭は「あとひとり」でゲームセットの窮地に陥ってしまったのである。