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檜山沙耶と真剣交際「西岡良仁」とは何者か? テニスライターが解説する“実像”「錦織以来の世界トップ30入り」「どんな負け方でも穏やかな取材対応」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byEPA/TOLGA AKMEN=JIJI PRESS
posted2023/07/13 17:00
「ウェザーニュース」キャスターの檜山沙耶との交際を発表した西岡良仁。彼はどのような人物なのか。テニスライターが明かす「人柄」「選手としての特徴」とは――
2020年の初めには、オーストラリア国内が森林火災の深刻な被害を受けている状況の中、全豪オープンの開幕前からテニス界でも支援の輪が広がったのだが、このときも西岡は1万豪ドル、当時のレートで約75万円を寄付した。チャリティーで人から集めたお金でもなければスポンサーの提供でもない。そして「僕も微力ながら力になりたいと思いました」と、金額も含めてツイッターできっちり報告。これもまた日本人がなかなかできないことで、日本には寄付の文化が根付いていないとよく言われるが、西岡の感覚はここでもグローバルだった。
驚異的なスピードと組み立ての巧さ
オフコートの話を連ねたが、テニス通に西岡のユニークなところを問えば、間違いなく彼のテニスそのものを挙げるだろう。ランキングのことは先に少し触れた通りで、6月には自己最高の24位をマークしたのだが、西岡の場合はその価値をさらに高める一つの要素がある。トップ30の平均身長が189cmという中で、ひときわ目立つ170cmという小柄な体格。ほかに170cm台は175cmのダニエル・エバンスが30位にいるだけだ。
パワーテニス全盛の中、この体格でこの位置につけるためにはよほどの武器を持っていなくてはならないが、西岡の場合は左利きのアドバンテージに加え、驚異的なスピードと組み立ての巧さがある。1ポイントを取るのに大変な労力が必要だが、類稀な能力を駆使して大きな選手たちをキリキリ舞いさせる様は観客を必ず楽しませるし、声援を送らずにはいられない。実際、これまで倒した相手には、211cmのイボ・カルロビッチ、208cmのジョン・イズナー、198cmのサム・クエリー、196cmのトマーシュ・ベルディフらがいる。対戦相手とのコントラストが際立てば際立つほど西岡のテニスはおもしろく、見る人を惹きつける。
苦境をバネに這い上がってきた西岡
振り返れば、観客のエネルギーをパワーにしていた西岡にとって、コロナ禍のツアー生活は苦しかった。不自由で、好奇心が満たされない遠征はストレスとなり、最初ツアーが中断されたときに自己最高の48位まで上げていたランキングは、昨年100位以下まで落ちた。勝ち方がまったくわからなくなったと嘆き、「2年以内に結果が出なかったら引退する」とまで口にした。自分の名を冠したジュニア大会をあの暗いコロナ禍でスタートさせたことは、リハビリ生活でのユーチューブと通じるものがあるが、それらは本業のテニスの調子がいいときは褒めそやされる一方、ひとたび調子が落ちれば批判の対象になりうる。
「ユーチューブなんかやってるから」、「ジュニア育成は引退してからでもいいのではないか」。
昨年のスランプではそんな声も聞いたかもしれない。しかし、そこから這い上がっての現在地。思わぬ注目を浴びた西岡の今後は、多分ますますおもしろい。
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