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大谷翔平は本塁打王を獲れる?「不安要素はライバルの打者ではなく…」エンゼルス残留か移籍か、全てのカギを握る「リスタート」の十番勝負
text by
小早川毅彦Takehiko Kobayakawa
photograph byNanae Suzuki
posted2023/07/13 11:02
前半戦は長打力が際立った大谷翔平
バッティングフォームの変化としては、構えた時のグリップの位置が少し下がっていることが挙げられます。昨シーズンは頭より少しだけ高い位置に構えていましたが、それを頭寄りに少し近くしてリラックスして構えているように見える。おそらく、スイングの幅を小さくしてバットが遠回りするのを防ぐ狙いがあるのでしょう。これも長いシーズンの中で自分のコンディションや対戦相手によってフォームを少しずつ調整していく大谷流なのだと思います。
アメリカン・リーグでホームラン王のタイトルを争うのは、6本差をつけているルイス・ロバートJr.(ホワイトソックス)。彼も引っ張ったレフト方向へも、センターへも打球を入れることができるバッターです。一度当たり出すと、どんどんホームランが出てくるタイプなので怖いですよね。ただ、オールスターのホームランダービーで故障したという情報もあり、これが少し気になるところでもあります。
ホームラン王獲得の不安要素は…
初のホームラン王獲得へ、不安要素を挙げるとすればそれは、ライバルの打者ではなく、大谷自身のチーム状況なのかもしれません。2021年は、後半戦に入ってバッティングの調子が失速しましたが、その原因は勝負を避けられていたから。ホームランが欲しいので強引になり、普段だったら手を出さないようなボール球に手を出して引っ張りにかかっていた。そうしているうちに、バッティング自体も崩れてしまったのが理由です。
そこを防ぐには、なんといってもチームが地区優勝争いに残ることじゃないかなと思うんですよ。優勝戦線から完全に脱落してしまえば、あとは個人の成績にしか目がいかなくなり、大谷一人が勝負を避けられてしまう場面も増えてしまうでしょう。チームが勝っていけば、まず勝利にウエートを置いて戦える。それは大谷本人としての気持ちも全く違ってくると思うんですよ。
今シーズンは、大谷が中心となってホームランを打った時に兜を被るパフォーマンスをしていますよね。あれはとても象徴的な出来事です。もともと、性格的にチームを引っ張るとか盛り上げるというタイプではないのかもしれませんが、チームを一つにして優勝するんだ、という気持ちがはっきりと見える。今年はチームとして、絶対に結果を出さないといけないんだ、という思いを形にしたことが大きい。大谷が打つのはホームランですけど、あれは“大ヒット”ですよ(笑)。