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[日本人打者が語る(3)]井口資仁「みんな泳がされたサンタナの緩急」
posted2023/07/09 09:02
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph by
Yuki Suenaga
メジャー1年目で日本人野手初の世界一に貢献。その後も選手、監督として名投手たちと接してきた。最強投手の記憶、その称号を得る条件とは。
右中間を切り裂く鋭い打球に、ランナーを進める徹底した右打ち。2005年、井口資仁はホワイトソックスで「2番・セカンド」として日本人野手初の世界一に貢献した。
そんな強打と巧打を兼ね備えた打者に、ポップフライと空振り三振の山を築かせた投手がいた。'04年、'06年と満票でサイ・ヤング賞に輝いたヨハン・サンタナである。
「真っ直ぐが特に速いわけでもないし、ものすごく動くボールがあるわけでもない。でも、打てないんですよ」
メジャーリーグでの4年間を振り返り、井口は記憶に残るサイ・ヤング賞投手として、サンタナのほかにサークルチェンジを武器に通算355勝を記録したグレッグ・マダックス、身長201cm、体重132kgの巨漢CC・サバシア、3度の受賞歴を誇り、40歳になった今も現役を続けるジャスティン・バーランダーを挙げた。
この中で、サンタナには40打数8安打、打率2割と最も手こずった。主な球種はフォーシーム、スライダー、チェンジアップと多くない。なぜ、捉えられなかったのか。
「チェンジアップと真っ直ぐが腕の振りも軌道も全く一緒で、タイミングが合わなかった。他のピッチャーは同じようでも微妙に違う。サンタナは真っ直ぐと思って振り出しても、まだまだ全然ボールが来てない感覚でした」