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[日本人打者が語る(2)]福留孝介「たった3年で見違えたシャーザーの風格」
posted2023/07/09 09:03
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Yuki Suenaga
バラク・オバマが第44代アメリカ合衆国大統領に選ばれた2008年、福留孝介はメジャーリーグで1年目のシーズンを戦っていた。当時のレートで4年総額約53億円という大型契約でシカゴ・カブスに入団したスラッガーは開幕ゲームの9回裏、同点3ランを放つなど、デビューから1カ月で早くも「カブス打線を変えた男」と認知され始めていた。
そんな5月、本拠地リグレー・フィールドで行われたアリゾナ・ダイヤモンドバックスとの試合で、ある投手に遭遇した。右眼は青色、左眼は褐色、オッド・アイと呼ばれる左右非対称の瞳を持ったマックス・シャーザーという右腕だった。マイナーから上がってきたばかりだという23歳は、次々と目の前に現れる全30球団の投手たちのデータをインプットしなければならない福留からすれば、数多いるピッチャーの1人に過ぎなかった。
「球はすごく速いけど、ストライクが入らないというアメリカによくいるタイプのピッチャーだった。正直、最初に対戦した時はそんなに印象に残らなかった」
だが、次に対峙した時、その投手は別人になっていた。
初対戦から3年後の2011年シーズン、クリーブランド・インディアンスに移籍していた福留は夏場、アメリカ北部の工業都市デトロイトでのタイガース戦に臨んだ。先発マウンドに立っていたのはシャーザーだった。シカゴで見た時はまだ先発とリリーフを行ったり来たりだった男は、黄金期を迎えたタイガースのローテーション投手にのし上がっていた。シェイプされた長身とトレード・マークのオッド・アイはかつてのままだったが、マウンドでの雰囲気はまるで違っていた。