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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
80歳超えて茶髪に植毛、精力絶倫で“54歳年下妻”と…ミラン名物会長ベルルスコーニの剛腕人生「キャプテン翼」欧州大ヒットも仕掛け役?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2023/06/27 17:01
06-07シーズンのCL制覇時のミランとベルルスコーニ会長
今シーズンの降格危機にはお得意の現場強権介入を発動。抜擢した若手指揮官パッラディーノの采配が大当たりし、11位という好成績で楽々残留を果たしたため「やはり頼りになる」とベルルスコーニを称える声がカルチョ界に再び湧いていたところだ。
齢を重ねても茶髪に植毛、54歳年下の内縁の妻と…
齢を重ねても茶髪に植毛、精力絶倫ぶりはお茶の間やバールで話題だった。“北米のアンチエイジング・ベンチャーに多額の投資をしていて、そのハイテク治療で120歳まで生きる”という与太話はやはり都市伝説だったようだが、検査入院した9日に死出の旅を予測していた向きは少ない。
入院する直前の午後、元ミランの帝王は54歳年下の内縁の妻マルタ・ファッシーナを連れて散歩を楽しみ、アイスキャンデーを食べにバールへ立ち寄った。店の主人の7歳の子供や他の客たちとにこやかに写真を撮り、冗談を交わした。
入院先のベッドから政党運営への指示を出し、10日の土曜夜にはインテルがマンチェスター・Cに敗れたチャンピオンズリーグ決勝をテレビ観戦したという。
片時もボディガードが傍らから離れない殿上人なのに、最後まで市井の人々と関わり合いながらベルルスコーニはふっと消えてしまった。老いさらばえることも隠遁することもなく、この世界から突然いなくなってしまった。
“帝王の最後”にしてはやけにあっさりとした、こんな往生を迎えるとは正直予想していなかった。
「キャプテン翼」の大ヒットも仕掛けた?
数年前、調べ物をしていた僕はふとあることに気づいて、思わず狼狽した。
もし、シルビオ・ベルルスコーニがいなかったら、欧州での『キャプテン翼』の大ヒットはなかったかもしれない……だと?
『ホーリー・エ・ベンジ』のタイトルで『翼』のイタリア版TVアニメが放送開始されたのが、1986年7月のことだ。放送した民放局「イタリア1」は、3年前にTV界の風雲児ベルルスコーニから買収されたばかり。イタリア1は旧態然とした国営放送RAIの番組に対抗すべく、日本製アニメを含む新しい時代のコンテンツを次々に電波に乗せた。
野心旺盛のベルルスコーニは、自らのメディア帝国拡大のために国境すら突破。スペインの「テレシンコ」やフランスの「ラ・サンク」といった地元民放局を次々と買収し傘下に収めると、イタリアで先行ヒットしていた『ホーリー・エ・ベンジ』が各国言語に手直し放送され、やはり社会現象を巻き起こした。