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オカダ・カズチカが「1・2・3、ダー!」を叫んだリングに清宮海斗の姿はなく…「オカダをぶっつぶす!」敵地・新日本に乗り込む26歳の決意
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/06/14 17:12
新日本のオカダ・カズチカを強烈に意識するノアの清宮海斗。6月9日に行われたオールスター戦『ALL TOGETHER AGAIN』で再び相まみえた
真夏の『G1』で“真の外敵”となるために
新日本では今年、26歳の海野翔太と25歳の成田蓮がオカダと棚橋に噛みつき、26歳のマスター・ワトがベスト・オブ・ザ・スーパージュニアで優勝し、さらに29歳の辻陽太がメキシコからの凱旋直後にIWGP世界ヘビー級王座挑戦を果たし……と、新たな流れが次々に生まれている。オカダを破ってIWGP王者となったSANADAが「新しい景色」と形容するような非日常の刺激、そして会場に戻ってきた声援は、コロナ禍によってプロレスに生まれた隙間を一気に埋める力を持っている。
非日常を味わうにあたり、「下剋上や成り上がりの瞬間を目撃すること」は大きな魅力のひとつになるものだ。過剰なまでにオカダを敵視する清宮への歓迎ぶりは、海野や成田、辻の台頭を期待する心情に近い。新日本が誇る真夏の最強決定戦『G1 CLIMAX』に清宮が参戦することが発表された際の会場の反応も、“外敵”を迎え討つファンのそれではなかった。
とはいえ、清宮からすればそんな扱いを素直に喜ぶわけにはいかない。26歳という年齢だけならば「トップに噛みつく若手」という立ち位置に何の違和感もないが、彼は団体最高王座であるGHCヘビーのベルトをすでに2度獲得している“ノアの顔”の1人なのだ。この日の試合で実現した3人同時のドロップキックで新日本・全日本の選手よりも高く飛んでみせたように、「自分が団体を背負っている」という責任感も強い。
そんな清宮が、大会のフィナーレに不在だった。
ノアを代表してファンとともにリスタートの景色に立ち会うことも重要な役割ではあっただろう。だが今だけは、オカダが音頭を取る「ダー!」に参加するわけにはいかなかった。
清宮は自団体の真夏のリーグ戦『N-1 VICTORY』を欠場し、ノアを代表して『G1』に参戦する。「ノアを休んででも新日本プロレスに乗り込むことが、清宮海斗とノアを広める手段になるという結論に至りました」というのが本人の弁だ。
ブロック分けではIWGP王者のSANADAだけでなく、海野、成田、辻とも同居することになった。「ライバル団体のファンにも応援される期待の若手」という存在から、脅威となる外敵として恐れられる存在へと自己変革を試みるのに、まさにうってつけの組み合わせだ。
もちろん、目指すものはその先にある。
「G1、オカダをぶっつぶす!」
「1・2・3、ダー!」ではなく、そう叫んで会場を後にした清宮海斗は、8月の国技館に大ブーイングと悲鳴を響かせることができるだろうか。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。