格闘技PRESSBACK NUMBER
オカダ・カズチカが「1・2・3、ダー!」を叫んだリングに清宮海斗の姿はなく…「オカダをぶっつぶす!」敵地・新日本に乗り込む26歳の決意
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/06/14 17:12
新日本のオカダ・カズチカを強烈に意識するノアの清宮海斗。6月9日に行われたオールスター戦『ALL TOGETHER AGAIN』で再び相まみえた
新日本のファンも清宮の「オカダ狙い」を歓迎
メインイベントが決着した瞬間も、大会の締め括りにおいても、会場のテンションはオカダの“ベルト披露”の場面と同じように上昇した。
35歳のレインメーカーは、腰に巻かれたベルトが何であっても、あるいはベルトが無かったとしても、「オールスター戦の最後に入場してくるのはオカダ。試合を決着させるのも、大会を締めるのも当然オカダ」と誰もが納得するような存在――団体の垣根を超えて頂点に君臨する存在――として、畏敬の念を持って見られるようになっていた。
そこにいるだけで、ガウンをはだけさせて視線を動かすだけで、その圧倒的な存在感によってエモーションを生み出すことができる。そんなオカダの入場を、リングの中央でじっと見つめる選手がいた。清宮だ。
2人の関係は今年に入って急激に深まっている。
1月の横浜アリーナでタッグマッチが行われると、清宮は自分を無視するオカダの顔面を蹴撃。大乱闘に発展し、試合はノーコンテストとなった。
すぐに2月の東京ドームでシングルマッチが組まれ、オカダはボイコットを宣言し続けたものの「ノアのファンに絶望を味わわせる」と敵地に乗り込んで襲撃。IWGP世界ヘビー級王者と、GHCヘビー級王者による対戦が実現した。
清宮のアピールで時間無制限になったものの、試合はオカダが16分32秒で完勝。そして今回、またしても対角線に立つ機会が訪れた。
オカダは今回も清宮の視線を無視し、試合が始まってもスカしてみせた。が、先に手を出したのもオカダだった。宮原と攻防を繰り広げていたにもかかわらず、突然コーナーに控えている清宮を襲ったのだ。火がついた清宮は控えに回ったオカダをドロップキックでリング外に落とし、場外戦に突入した。
意外なことに、新日本のファンも清宮がオカダを攻撃することを歓迎していた。オカダが団体の枠を超えてトップに君臨する存在であることと同様に、16分32秒で叩きのめされた東京ドームでのあの試合が、逆説的に清宮を「団体の枠を超えて、オカダ撃破を期待される存在」へと引き上げたようだ。