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辻陽太の巨体が力強く宙を舞い…メキシコ帰りの29歳はいかにして観衆の心をつかんだのか? IWGP王者SANADAも「あんなに飛んでくるとは…」

posted2023/06/08 17:24

 
辻陽太の巨体が力強く宙を舞い…メキシコ帰りの29歳はいかにして観衆の心をつかんだのか? IWGP王者SANADAも「あんなに飛んでくるとは…」<Number Web> photograph by Essei Hara

6月4日、メキシコ帰りの辻陽太は大阪城ホールでIWGP世界ヘビー級王座に挑戦。惜しくもベルトには手が届かなかったが、強烈なインパクトを残した

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原悦生

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 内藤哲也らのユニット、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン入りを前日に表明した29歳の辻陽太は、6月4日、大阪城ホールでSANADAの持つIWGP世界ヘビー級王座に挑んだ。王座奪取こそならなかったが、会場は「Yotaコール」が支配していた。

「一発で観衆の心をつかんだ」辻陽太の捨て身のダイブ

 ロス・インゴ入りは辻への大声援の後押しになった。

 王者のSANADAが入場してきて、IWGPのベルトを掲げた時、反対側のロープ際で背中を向けていた辻はニヤリと笑ってみせた。辻のこの表情が場内のスクリーンに大きく映し出されると、「この男、やるな」と会場の期待感が膨らんだ。

 SANADAにとってはやりにくい状況が加味された。福岡での高橋ヒロムに続いて、またしても、かつて所属していたロス・インゴからの刺客という形になってしまった。人気のあるロス・インゴを敵に回したことは、そもそもSANADA自身の選択であって、実際こうして新日本プロレスの看板タイトルを持っているわけだが、ファンの風当たりは強めだ。

 試合は意外にもゆっくりとしたテンポで進んだ。最近では珍しく、独特の長い間合いがあった。辻が放った場外への捨て身のダイブ「ブエロ・デ・アギラ」(Vuelo de Aguila)は、ブエロ(飛翔)という名の通り、獲物を狙う鷲の姿を想起させるものだった。

 辻が修行を積んだメキシコの国旗にも描かれている鷲だ。蛇をくわえてサボテンの上に立つ鷲は、湖の上に造られたアステカ王国の首都テノチティトランの象徴でもあった。そんな鷲が飛んだ。体が大きいと迫力がある。「オーッ」と、場内がどよめいた。

 辻はこの一発で、大阪の観衆の心をつかんでいた。

 SANADAは試合後、辻の大技についてこう語った。

「いや、動じていました。正直言うと、ホント全部強烈で。ウワサではなんかアクロバティックなことするっていうのは聞いていたんで、それも頭に入っていたんですけど、まさかあんなに飛んでくるとは思わなかった」

 SANADAもいつもより高めのプランチャを返したが、辻が残したインパクトの方がはるかに大きかった。

【次ページ】 SANADAは「ロス・インゴ包囲網」を切り抜けられるか

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