「シーズンが終わり、ブラジルで休暇を過ごしていた。次の年も、ヨミウリでプレーするつもりだった。ところが、代理人から移籍の話が舞い込んだ。『1993年のJリーグ入りが決まっている清水エスパルスが、日本で最もフットボールが盛んな静岡の選手を集めて強力なチームを作ろうとしている。監督はエメルソン・レオン（注：元名GKで、ブラジル代表の一員として1970年代から80年代にW杯4大会に出場。引退後、指導者になっていた）』、『君以外に、ヨミウリからカズと兄ヤストシ（三浦泰年）の兄弟も移籍する』とも聞いていた。ただ、最終的にカズはヨミウリに残ったんだけどね」

ジーコ、リティ、リネカー……僕らも興奮したよ

――当時の清水の練習施設は？

「決まった練習場がなく、ホペイロもおらず、ユニフォームを家へ持って帰って自分で洗わなければならなかった。でも、半年ほどで練習環境は急速に改善され、プロらしくなった」

――当時の清水には、FW長谷川健太、MF澤登正朗、FWミランジーニャらがいました。Jリーグの前哨戦と目されたナビスコカップの決勝でヴェルディ川崎（※読売クラブから呼称変更）と対戦しますが、カズのゴールで0－1で敗れ、準優勝でした。

「清水には才能豊かな若手が多く、試合を重ねて連携が深まると、どんどん強くなった。

　もうこの頃は翌年のJリーグ開幕を控えて大変な盛り上がりで、決勝の舞台となったコクリツ（旧・東京国立競技場）は超満員。惜しくも敗れたけれど、試合内容は互角だった」

清水－V川崎戦、柱谷と競り合うトニーニョ ©Koji Asakura

――そして、1993年のJリーグ開幕を迎えます。

「ジーコ、リトバルスキー、リネカーら世界各国のスターが集結し、ファンの熱狂ぶりはブラジルリーグ以上。プロリーグの発足に立ち会えるなんて滅多にないことだから、僕たち選手も非常に興奮した」

――5月16日、清水はアウェーで横浜フリューゲルスと対戦。2－3で敗れましたが、あなたはJリーグ初得点を記録します。

「どうしても勝ちたかった試合だから、とても悔しかった。でも、個人的には手ごたえをつかんだ」

帰国時、ビジネスからファーストクラスに…（笑）。

――あなたは次節サンフレッチェ広島戦で決勝点をあげ、第3節の鹿島アントラーズ戦でもゴールを決めて3試合連続得点。ゴール後、走りながら両手を水平に広げる「飛行機ポーズ」が話題になりました。あれは、清水に入団してから始めたのですか？

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