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ボクシングPRESSBACK NUMBER
那須川天心は井上尚弥の「比べるのは流石に可哀想」をどう受け止めた?「あっ、触れるんだ…」24歳が語ったホンネ《単独インタビュー》
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySusumu Nagao
posted2023/06/08 11:05
5月27日、大阪でインタビューに答える那須川天心。プロボクサー転向後の反響や、周囲からの評価に対する率直な思いを明かした
プロボクサーとしてはまだキャリア1戦ながら、キックボクサー時代に積み上げた人気は絶大。そのことを天心は自覚しており、「僕の方からいろんな学校に行ったり、知名度をいい方向に使いたい」とプロジェクトにも善用したいと考えている。
また、このムーブメントは「現役中にやらないと意味がない」というこだわりもある。
「自分が在籍していた学校に昔すごかったアスリートが来たりもしたけど、活躍していた頃を観ていたわけではないので、あまり知らない。だったら僕は子供たちが(リアルタイムで)観ているときに直接、話をしたい。僕がテレビに出て注目されたら、『天心、頑張ってるじゃん。だったら自分も頑張ってみよう』と思ってもらえるような方向に持っていきたい」
天心は上から目線で子供たちと接しようとはしない。この日も子供たちと一緒に笑い、汗をかき、集中していた。以前、関東でこのプロジェクトを開催したときには「子供たちと精神年齢が同じなのかも」と軽口を叩いていたが、筆者の目には、子供たちと同じ目線の高さで、同じ方向を向こうとしているように見えた。しかも意図的にではなく、自然体で。これも一種の才能だろうか。いみじくも天心は言う。
「僕は、自分もやるからお前も頑張れ、というスタンスですね」
「(ボクシングは)大衆からの信頼度がすごいな、と」
もうひとつ別のスタンスもある。対戦相手だけではなく、常に「世間と闘う」という姿勢だ。ボクシングに転向したことで、天心は世間から認められたリングスポーツとしての“権威”を思い知らされた。
「結構、みんな僕がボクシングに転向したことを知っている。普通に道端でおじさんや女性や子供に『ボクシング、頑張ってください』と声をかけられますからね」
メディアの扱いの違いも肌で感じた。
「転向を宣言しただけで新聞に載ったり、全国ニュースで報道されたり……。デビュー戦も全部の新聞に載っていたので、『ああ、こんな感じなんだな』と思いました。ちゃんと歴史もあって、マス(大衆)からの信頼度がすごいな、と。世間にちゃんとしたもの(競技)として認められているんだな、ということを改めて感じました」