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「正直、ダルさんの後に行くのはヤバいなと」阪神の守護神・湯浅京己が明かすWBC決勝での”密命” 憧れのダルビッシュから受けた影響とは? 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/06/05 17:00

「正直、ダルさんの後に行くのはヤバいなと」阪神の守護神・湯浅京己が明かすWBC決勝での”密命”   憧れのダルビッシュから受けた影響とは?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

昨季はセ・リーグの最優秀中継ぎ賞に輝き、独立リーグ出身選手として初のWBC戦士となった阪神・湯浅京己(23歳)。今後の自身の青写真を語った

「そうですね……」

 大志を押し隠すように、意味ありげに笑った。

WBC「ダルさんの後に行くのはちょっとヤバいな」

 3月のWBCでは日の丸を背負い、夢を膨らませるための貴重な経験を重ねた。

 アメリカとの決勝戦、マイアミの湿り気を帯びた風が吹くローンデポ・パークの屋外ブルペン。日本がリードを保ったままダルビッシュ有(パドレス)から大谷翔平(エンゼルス)へと繋ぎ大団円へと至るドラマの陰で、右腕は密命を帯びていた。

 それは2点リードの8回。ダルビッシュがリリーフ登板のためマウンドへと向かう直前のことだ。日本代表のブルペン捕手を務めていた鶴岡慎也が囁いた。

「今日は(ダルビッシュは)あんまり調子が良くない。準備しておいた方がいい」

 日本ハム時代に長らくダルビッシュの女房役を担った鶴岡だからこそわかる感覚。厚澤和幸・ブルペン担当コーチの指示でもともと肩は作っていたが、“有事”に備え緊張感は高まるばかりだった。

「正直、前日の(準決勝)メキシコ戦で自分が投げていた時よりもずっと緊張していました(笑)。ダルさんの後に行くのはちょっとヤバいな、と思って」

 やはり本調子ではなかったダルビッシュは1点を失ったがなんとか踏みとどまり、9回に登板した大谷も最後を締めて緊急登板はせずに済んだ。劇的な世界一の瞬間、全てから解放された湯浅はブルペンのドアを押し開け、歓喜の輪が広がるマウンド目掛け一目散に走っていた。

「初めてですね。あんな……なんて言うんですかね……ああいう雰囲気の中で全員が一つの勝ちに向かって行く。本当にいい経験をさせてもらったと思います」

憧れのダルビッシュから受けた影響

 2月中旬に宮崎市内で船出した強化合宿から1カ月余りの日々。23歳が手にした一番の宝物は、日本代表の旗のもと、チームの垣根を越えて集った屈指の投手たちから受けた刺激と、共に育んだ熱い絆だ。

 特に、憧れの存在であったダルビッシュから受けた影響は大きかったと話す。

【次ページ】 スライダーやフォークの握りも教えてもらった

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