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『BOSJ』初制覇マスター・ワトは新時代の扉を開けるか? 26歳が歩んだ“順風満帆ではないプロレス道”「メキシコの黄色い鶏肉が懐かしい…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/06/01 17:13
『BEST OF THE SUPER Jr.』初優勝を飾ったマスター・ワト。6月4日、大阪城ホールで高橋ヒロムの持つIWGPジュニアヘビー級王座に挑む
不敵に笑う王者・高橋ヒロム「どの扉を開けても…」
そして5月28日。ついに30回目のBOSJはワトのものになった。華麗なテクニックの応酬は負傷と隣り合わせだ。それでも、プロレスラーとしての誇りがワトに勇気と自信を宿らせた。
トップロープ越しのトペ・コンヒーロは、一見の価値がある決死のダイブだ。
会場に流れるあの「スカイハイ」より高く、ワトは飛んだ。相手を高く持ち上げて落とす通天閣ジャーマン・スープレックス・ホールドは見応えがある。さらには飛びつき十字架固めレシエンテメンテⅡでフォールを奪った。
19歳でデビューした男は26歳になった。だが、そのレスラー人生は決して順風満帆ではなかった。
以前、高橋に言われた言葉をワトはしっかりと覚えている。
「5年後、10年後、オレはチャンピオンでいるよ。オマエがこのベルトを欲しいのなら、自然とまた巡り会えるだろう」
ワトは感慨深げだった。一人で体を癒したいとも思った。でも、それは許されない。
「高橋ヒロムがいたからジュニアでやるって決めた。高橋ヒロムだから、あなたを倒したい。BOSJを3連覇して、IWGPジュニアのベルトを持っている。強いことは間違いない。でもヒロムさんを越えてやる。そしてオレが新時代を開く」
ワトは時代を切り開くための第一歩を踏み出した。
一方で、「どの扉を開けても、いるのはオレ」と不敵な笑みを浮かべるのは高橋だ。
5月30日、高橋はドラディションのリングに上がり、6人タッグで藤波と対戦した。ジュニア・ヘビーの歴史を築いた飛龍と現IWGPジュニア・ヘビー級王者のつかの間の初対決を楽しんだ。
「6人タッグじゃ藤波さんを感じることができませんでした」と語る高橋から「次はシングルで」とアプローチもあったようで、藤波vs高橋のシングル戦が見られる可能性も出てきた。
大一番に向けて、ワトはこう意気込みを口にした。
「マスター・ワトとして初めて試合をしたのも大阪城ホール。そして6月4日、地元で堂々と挑戦できるのは最高です。そのうえで、高橋ヒロムを倒すというもう一つの目標を叶えます」
ワトはさらなる欲をもって、グランドマスターへの道を歩む。
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