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「バスケはすっごい、すっごい楽しい」八村塁がNBAレイカーズで思い出した“原点”とは? 敏腕コーチと最高のお手本に囲まれた濃密4カ月
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2023/05/30 11:01
トレードで加入したロサンゼルス・レイカーズで充実の時間を過ごした八村塁(25歳)
「レイカーズはプレイオフ(圏内)にも入っていないチームだったので、僕としても、僕のエージェントとしても賭けだったんですけど、その中で僕はエージェントのこと(アドバイス)を信じて、このチームであれば僕の力を出していけるということで選びました。いろんな波があったんですけど、最終的には僕としてはいい結果になったんじゃないかなと思います」
八村が言うように、彼が加入したときのレイカーズは22勝25敗で、この時点ではウィザーズとたいして変わらない成績だった。西カンファレンス12位で、プレイオフ出場どころか、西カンファレンスからプレイオフ最後の2枠を争うためのプレイイントーナメントに出られる順位(7〜10位)ですらなかった。
しかし、八村獲得のトレードとその半月後のトレードによる補強が大成功したことで後半は大きく勝ち越し、レギュラーシーズンが終わったときには43勝39敗、西カンファレンス7位まで順位をあげていた。プレイインに勝ってプレイオフに進出し、1回戦で西2位のメンフィス・グリズリーズを倒し、西カンファレンス準決勝では昨季のチャンピオン、ゴールデンステイト・ウォリアーズとの激戦を制した。
西カンファレンス決勝では、西1位のデンバー・ナゲッツを相手に力尽きて敗れ、目標としていた優勝には手が届かなかったが、まさに快進撃と言っていい戦いぶりだった。そして、その戦いをする中で八村は攻守でチームに必要な選手としての存在感を示し、笑顔も戻ってきた。
「私にルイを担当させてほしい」
レイカーズに入ってからの約4カ月のすべてが順調だったわけではない。チーム内での役割が定まらず、出場時間が不安定だった時期もあった。3月下旬には、人生で初の、ベンチ入りしながら試合に出られないこともあった。
そんな中で、信頼できる人との出会いや支えがあったことで、苦しい時期を乗り越えることができた。そのひとりが、レイカーズのアシスタントコーチ、フィル・ハンディだ。
かつてコービー・ブライアントやカイリー・アービング、カワイ・レナードをコーチしたことがあり、レブロン・ジェームズとはクリーブランド・キャバリアーズ時代からワークアウトを共にしており、トッププレイヤーたちからも信頼されるコーチだ。
レイカーズが八村を獲得した直後、ハンディACはヘッドコーチのダービン・ハムにテキストメッセージを送った。そこには「私にルイを担当させてほしい」と書かれていた。八村の能力や伸びしろに魅力を感じていたからだった。
ハムHCは言う。
「フィルはただ単にワークアウトをするだけでなく、試合にそのまま通用するような練習をする。コートワークも、フィルムワークも、すべてがそうだ。ルイはそれをすべて熱心に取り組んでいる」