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「バスケはすっごい、すっごい楽しい」八村塁がNBAレイカーズで思い出した“原点”とは? 敏腕コーチと最高のお手本に囲まれた濃密4カ月
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2023/05/30 11:01
トレードで加入したロサンゼルス・レイカーズで充実の時間を過ごした八村塁(25歳)
たとえばディフェンスは、ウィザーズ時代に八村の弱点だと言われていたところだった。レイカーズでは、八村のディフェンスの弱い部分も指摘しながら、逆にどういった状況なら八村がディフェンダーとして活躍できるのかをコーチ陣が考え、活躍できる役割を与えてくれた。
カンファレンス決勝のナゲッツとのシリーズで、相手のエースで、過去2シーズンでリーグMVPを受賞しているニコラ・ヨキッチのマークを任されたことが、そのひとつだった。ヨキッチのように身体が大きな選手を相手にしても、フィジカル面で押され負けず、足をよく動かして動きについていけるという面で、八村の特性を生かせる。
「彼はずっとMVPとしてやってきている選手。そういうところで、僕としてはディフェンスでチームから信頼というか、任されているんだなという気持ちはあります」と八村は胸を張った。
こういった経験の中で八村が学んだのは、チームとして戦うなかで、どうやって自分の強みを生かすかが大事だということ。たとえばヨキッチをうまく守ったときでも、それは決して自分ひとりの力ではない。後ろにはリーグでも有数のディフェンダーのデイビスが控えていたからこそ、自分ができることに専念できた。オフェンスでも、レブロンやデイビスがディフェンダーを引き付けることで、自分がノーマークになって、練習のときのようなタイミングで3Pショットを打つことができた。トランジションで走れば、味方からいいパスが来て、フィニッシュすることができた。
バスケットボールの醍醐味を思い出した4カ月
プレイオフで敗れた後、レイカーズに移籍してから学んだことは何だったのかと尋ねると、八村はこう答えた。
「自分の強みが何かっていうことで、ディフェンスの部分でもオフェンスの部分でも、チームでやると自分の強みがしっかり出てくるんじゃないかなと思う。そういうところは、これからも生かしていきたいなと思います」
それこそが、チームスポーツであるバスケットボールの醍醐味だ。明成高校で「バスケはすっごい、すっごい楽しい」と言ったときも、チームで力を合わせて困難に立ち向かい、それによって試合に勝つことができた喜びを感じていたのだった。そういうことを思い出すことができたレイカーズでの4カ月だった。それがわかったからこそ、苦しかった4年にも意味を見出すことができた。
「別に高校のときもずっと楽しかったわけじゃない。苦しいことを乗り越えて優勝するとか、自分で達成感を出すことによって、楽しさっていうのが僕にわいてくると思う。(NBAに入ってからの)この4年間も、ずっと見るとすごい苦しかったときも多かったと思うんですけど、最終的にこう振り返ってみると楽しかったなっていう感じなので、そういうのがやっぱり大事じゃないかなと思います」
NBAに入って4シーズンが終わり、このオフにはフリーエージェントになる。レイカーズ側は八村との再契約を今オフの優先事項としており、八村自身もレイカーズと再契約したいと言う。しかし契約は交渉ごと。どういう結果になるかは予測できない。それでも、ひとつ確かなことは、このレイカーズでの4カ月がNBA選手としての八村にとって、重要な転機になったということ。
「まるで2〜3シーズン分が詰まったようなシーズンでした。とてもすばらしいシーズンでしたし、これからの僕のバスケ人生を考えても、すばらしい経験だったと思います」
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