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〈U-20W杯〉「先制点取ります!」松木玖生の有言実行弾以外も若き日本代表が逞しい…冨樫監督が用意した「いろんな戦い方」に応える柔軟性
posted2023/05/23 11:03
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Hector Vivas - FIFA/Getty Images
ペナルティエリアやや外から左足で放ったシュートがゴール右隅を破ったとき、思い浮かんだのは前日の光景だった。
U-20ワールドカップのセネガルとの初戦を翌日に控え、取材陣から「先制点、取ってくれるよな」と問われた松木玖生(FC東京)は、少し柔らかく、それでいて自信漲る表情で「そうですね。先制点取ります!」と言うと、その場にいた記者全員とグータッチを交わしたのだ。
頼もしく感じられたのはもちろんだが、それを実際にやってのけるのが、この男の真骨頂――。
松木「次の試合でも得点が取れるように」
試合後、キャプテンはてらうことなく、こう言った。
「常に狙っているシュートレンジでもあるし、もう一個遠くからでも狙う自信はあるので、思い切り打ててよかった。こういう大舞台に強いのが自分。次の試合でも得点が取れるように、まずはチームの勝利に貢献したいと思います」
振り返れば、今年3月に行われたU20アジアカップ(アジア最終予選)で若き日本代表は、中国との初戦で大苦戦した。重圧からか全体的に動きが鈍く、先制を許す苦しい展開。途中出場の熊田直紀(FC東京)の2ゴールで辛うじて逆転したが、苦い経験を味わった。
そうした“前科”があっただけに、15分という早い時間帯に生まれた先制ゴールは、チームを落ち着かせるという意味で大きかった。
「10番のドリブルを阻止しながら矢印をひっくり返す」
このゴールがもたらした効用はそれだけではない。
アフリカ予選を全勝で、しかも無失点で突破したセネガルは、前・後半の立ち上がり15分間にゴールを奪う傾向があった。
「その時間帯を無失点で終えられるようにしたい」と松木は試合前に語っていたが、無失点どころか、逆にその時間帯に先制点をもぎ取ったのだ。セネガルに突きつけた心理的プレッシャーは、決して小さくなかったはずだ。
その後、反撃を許して苦しい展開となったが(VARによって取り消されたが、21分の失点は危なかった)、その一方で、日本の周到な準備が感じられたゲームでもあった。
「彼らのカウンター、左サイドの10番のドリブルを阻止しながら相手の矢印をひっくり返すことによって、バイタルエリアが空いてくるという想定だった」
そう振り返ったのはチームを率いる冨樫剛一監督である。強さ、速さ、高さを備えたセネガルに対して、日本はセンターバックが本職で身長192cmの高井幸大(川崎フロンターレ)を右サイドバックとして起用する。