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“あの人は、東大監督の枠に収まる器ではない” 監督3年目・林陵平(36歳)は秀才集団をどう惹きつけた?「“元プロだから”は通用しない」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byYuki Suenaga

posted2023/05/12 17:01

“あの人は、東大監督の枠に収まる器ではない” 監督3年目・林陵平(36歳)は秀才集団をどう惹きつけた?「“元プロだから”は通用しない」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

東京大学ア式蹴球部の監督に就任して3年目を迎えた林陵平。「まさか自分が赤門をくぐるとは」と、本人も笑うほど意外なキャリアを歩んでいる

 ロジカルな東大生たちを納得させるのは、一筋縄ではいかなかった。東大ア式蹴球部内には、学生コーチもいれば、自ら希望して分析を担当する『テクニカルユニット』も20人ほど在籍している。

「当初、意見の食い違いはよくありました。そのときも論理的に説明しないと、話を聞いてもらえません。相当鍛えられましたよ。こっちが“元プロだから”は通用しない。戦術に詳しい選手、スタッフは多いし、知識も豊富です。頭脳明晰で弁も立つので、頭ごなしに指導してもダメ。『何を言っているんだ』と思った時期もありましたが、これも勉強だと自らに言い聞かせました。

 たとえ相手が学生でも、まずは話を聞くことが大事。『キーパーを使って、ビルドアップしましょう』と言われたときもそう。現代サッカーでは当たり前になっていますが、技術レベルを考えれば、現実的に難しかった。机上の空論にはしたくなかったので、勝つために最良の選択をしようと話しました。勝ってこそ、サッカーの中身も評価されるって」

 時間をかけて、東大の学生との距離は縮めてきた。ときにはユーモアを交えて、「デートすることも大事。プライベートを充実させよう」とアドバイスも送る。気がつけば、自然と『陵平さん』と呼ばれるようになった。

「陵平さんの人間性にも惹かれている」

 選手と監督のやり取りを見てきた4年生の女子マネジャーは「選手たちは陵平さんの人柄、人間性にも惹かれている」と話す。『テクニカルユニット』のユニット長を務める高橋駿平(経済学部3年)も、うれしそうに関係性の変化について話す。

「当初は異質の集団だと思われていたかもしれませんが、いまでは認めてくれていますし、陵平さんとコミュニケーションを取る機会も増えました。気軽に会話ができ、選手起用についても僕たちに意見を求めてくれるので」

 結果により目を向け始めた東大ア式蹴球部は、着実に成長している。今季は1部リーグで幸先の良いスタートを切り、6節時点で2勝3分け1敗の7位。5戦目で首位の成蹊大に初黒星を喫したときは悔しさをにじませ、沈み込んでいた。現時点でプロを目指すような選手は一人もいないが、誰もがどん欲に勝利を求めている。林氏は監督として、選手の熱意を感じ取っていた。

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