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ついに実現「大谷翔平vsヌートバー」…WBC後、じつは4月のヌートバーは苦戦していた「大谷と何が違う? 昨季から悪化した“ある数値”とは?」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2023/05/03 17:02
日本時間5月3日の試合前、久々に再会し握手する大谷翔平とヌートバー。4日のマウンドには大谷が上がる予定だ
メジャーリーグのデータ分析によれば、選手がピーク、「プライムタイム」を迎えるのは25歳から30歳の間とされている(メジャーでは稼働6年でFAとなれるので、20代前半でデビューしたエリート選手は絶頂期でFAを迎える可能性が高い。国内FA権取得まで8年〔大学生・社会人は7年〕かかる日本は、プライムタイムを過ぎた選手と契約するケースが多々あり、スマートな補強戦略とはいえない――というのが私の見方)。
ヌートバーは今年9月8日で26歳を迎えるわけで、これからプライムタイムを迎えると予想され、数値が向上する余地を残しているとセイバーメトリシャンたちは期待する。
今季の成功の目安は「打率.280、25本塁打、10盗塁」とされている。
つまりは、オールスター級の活躍だ。かなり大きな期待を背負っていると言わざるを得ない。
ところが4月のヌートバーは苦戦した。突き指で故障者リストに入ってしまったのは不運だったが、4月終了時点での成績は次の通りだ。
打率 .240
本塁打 2本
出塁率 .415
長打率 .380
OPS .795
昨季と比べてマイナスになった数値
打率が.240と低いにもかかわらず、出塁率が.400を超えているのは四球を16個取っている(※日本時間5月3日時点)からだ。選球眼の良さはヌートバーの持ち味であり、首脳陣に評価されている部分だ。
ただし、不安なのはパワー・カテゴリーでの数値を軒並み落としていることだ。
メジャーリーグのホームページからは、スタットキャストの数値がすぐに引っ張り出せるが、ヌートバーの数値を昨季と比べてみよう(左が2022年、右が2023年)。
打球初速 91.7マイル 88.2マイル
打球角度 10.7度 -4.0度
スイートスポット率 30.4% 22.6%
バレル率 12.1% 9.7%
中でも重症と思われるのは打球角度がマイナスになっていることだ。つまり、打球が上がらず、ゴロの割合が増えていることを示す。まだ開幕から1カ月しか経過しておらず、しかも故障者リストに入っていたことからサンプル数も少ないので即断はできないが、改善点は明らかである。エンゼルスとの3連戦では、ヌートバーの打球が上がるかどうかに注目して欲しい。
初速があり、打球が上がってくれば――自ずと成績は向上してくるはずだ。
最下位カージナルスには“ヌートバーの復調”が不可欠だ
エンゼルスとカージナルスの対戦は、セイバーメトリシャンにとっても目が離せないカードになる。