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ついに実現「大谷翔平vsヌートバー」…WBC後、じつは4月のヌートバーは苦戦していた「大谷と何が違う? 昨季から悪化した“ある数値”とは?」
posted2023/05/03 17:02
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Getty Images
日本時間5月4日、午前8時45分。
大谷翔平がセントルイスのマウンドに上がるが、最初に対戦する打者は……ラーズ・ヌートバーの可能性が高い。
WBCで共に戦ったメンバーが自分の所属に帰り、対戦する。実現すればなんともワクワクするマッチアップになるし、インターリーグだけに貴重な顔合わせである。
「大谷翔平vsヌートバー」昨季の数字で比較すると…
日本で知らない人はいないほどになったヌートバーだが、アメリカではデータ分析から野球を考察する「セイバーメトリシャン」たちから熱視線を浴びている。
今季の開幕前、”Redbirds Rants”というカージナルスに特化したニュースサイトにこんな見出しが躍っていた。
「2023年のラーズ・ヌートバーは、“スタットキャスト”にとってのリトマス試験紙」
スタットキャストとは、トラッキングシステムのひとつで、2015年にローンチした。投手についてはスピンの量などが明らかになり、打者については打球の初速や角度、そして速度と角度の組み合わせから導かれる「バレル率」などが算出される。
ちなみに、昨季のアメリカン・リーグの三冠王、アーロン・ジャッジは打球の初速が大きな武器だ。昨季、ジャッジの平均打球初速は95.9マイルで、平均角度が15度。バレル率は26.5だった。
比較対象として昨季の大谷翔平を挙げてみると、平均打球初速が92.9マイル、平均角度が12.1度、バレル率は16.8だった。大谷の名誉のために打者としては最高のシーズンとなった2021年のデータを挙げておくと、それぞれ93.6マイル、16.6度、22.3だった。
ジャッジ、大谷は超一流だが、昨季のヌートバーは平均打球初速91.7マイル、バレル率12.1、四球の割合などでトップ100に入っていた。この数値を見たセイバーメトリシャンたちが、ヌートバーを「ブレイクスルー候補」に挙げたのだ。
じつは4月のヌートバーは苦戦していた
2019年までごくごくフツーのマイナーリーガーだったヌートバーに変化が訪れたのは、2020年に「虎の穴」とも呼ぶべき「ドライブライン」を訪れたことが影響していると私は3月の記事で指摘した。実際、ヌートバーはサンプル数が少ないながらも、2021年、2022年と順調に成長を重ねてきた(昇り竜の彼を日本代表に招集した栗山英樹監督の眼力には敬意を払うしかない)。