野球が終われば、全員が難関大学への入試を控える。宮崎監督は、今しかできない野球から多くのことを学んでほしいと願っている。

「自主自律とも言いますが、受験戦争を経験してきて、どうしても個人のことに特化してしまう。それ自体は悪いことではないのですが、人のことに干渉しない分、周囲に興味がなくなってきているのではないかとも思うんです。ここにいる子らは将来、偉くなって上に立つ人間になるかもしれません。でも、自分のことだけで終わって欲しくないんですよね。自分が（上に）立ってこそ、という者もいる中で、周りも見渡せるような器の大きい人間になってもらいたいんです」

　前述した神戸学院大付との試合では、劣勢になっても「まだまだ！」「ここからやぞ！」という威勢のいい声が灘高校のベンチから響いていた。67年前の先輩たちが挙げた「春の1勝」に並ぶことはできなかったが、選手たちはすでに前を向いている。

「この春は僕たちにとって何もかもが初めての経験でした。勝つことが一番ですが、強い相手と試合をして、まだまだな部分があらためて分かりました」（堀坂）

「地区大会では体験できないことを、この春は経験させてもらいました。あとは自分たちの能力を上げて、夏は必ず1勝したいです」（田中）

神戸学院大付戦でチーム初安打を放った4番・田中壮太郎　©︎Fumi Sawai

　大敗しても下は向かない。むしろ、もっと勝ちたいという思いが強くなった。この続きは夏。無限の意欲が、グラウンドに立つ“頭脳派集団”をさらに進化させる。

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