「第一志望は京大医学部です」灘高野球部が67年ぶりに“壁”を突破…主将が語る“意外な日常”とは？「バリバリ勉強という感じでもない」

「これが県大会なのか……」

　灘高校の一塁を守った4番打者の田中壮太郎（3年）は、次から次へと外野に飛んでいく打球を見ながらそう思った。

「最初から（県大会の）雰囲気に飲まれていました。相手校の応援や地区大会とは違ったスタンドの雰囲気とか……対戦相手の雰囲気にも飲まれてしまって。（地区大会で）できていたことが今日は全くできませんでした」

　春と秋は県大会出場を懸けて地区大会が行われる兵庫県。灘高校はこの春、神戸地区Cブロックで2勝を挙げ、実に67年ぶりに春季兵庫県大会に駒を進めた。初戦で神戸学院大付に10―0の5回コールド負けを喫したが、半世紀以上も立ちはだかっていた“春の地区大会の壁”を突破できたことは、灘高野球部にとって快挙と言える。

近年、着実に力をつける神戸学院大付高校（右）と対戦した灘高校（2023年春季兵庫県大会）。地区大会を勝ち抜き、67年ぶりに本大会に出場した　©️Fumi Sawai

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「バリバリ勉強ってイメージが強いけど…」

　東大合格者63人、京大合格者28人――この春の現役合格者の進学実績が示す通り、灘高校は言わずと知れた全国屈指の進学実績を誇る中高一貫校だ。

　小学生時代に激しい受験戦争を勝ち抜いた精鋭たちが、さらに中高一貫の6年間で勉学に磨きをかけるべく、日々勉強に重きを置く。そんな環境下で野球に励むとは、どういう心持ちなのだろうか。主将・堀坂俊輔（3年）はこう語る。

「灘高校ってバリバリ勉強をやっているイメージが強いと思うのですが、実際はそこまでずっと勉強、という感じでもないんです。もちろん、普段から勉強はしていますが、野球は野球、という感じでメリハリをつけて楽しんでいます」

灘高校野球部の練習風景　©️Fumi Sawai

　通常授業は朝の8時40分から15時。授業が終えた選手たちは、校内にある約75メートル四方の人工芝のグラウンドに集まる。それぞれでアップをし、ホワイトボードにあるメニューに沿って準備をし、下校時間の18時まで2時間ほど汗を流す。火曜日のみ7限授業で、その日が週に1度のオフだという。

　1週間の流れも、練習メニューも決して特別なことはしていない。そう語るのは野球部就任9年目を迎える宮崎秀明監督（45歳）だ。

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