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「ミルコをKOし、ヒョードルをぶん投げた男」ケビン・ランデルマンを覚えているか? “伝説のバックドロップ”を撮ったカメラマンの追憶
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2023/04/22 17:00
自慢の怪力でエメリヤーエンコ・ヒョードルを担ぎ上げるケビン・ランデルマン。多くのファンに愛された好漢は、2016年に44歳の若さでこの世を去った
ランデルマンは2000年6月にペドロ・ヒーゾを相手にタイトルを防衛したが、同年11月にランディ・クートゥアにKO負けして王座から転落。2002年にUFCを離れた。アメリカのローカル団体で1試合を挟んだ後、彼が次なる戦いの舞台として選んだのはPRIDEのリングだった。
お気に入りの一枚は「ヒョードルを投げた写真」だった
なお、ランデルマンのUFCでのデビュー戦は1999年とあるが、実はその3年前、マーク・コールマンを相手にオクタゴンデビューを済ませている。1996年9月、ゴルフのメジャー大会のひとつ「マスターズ・トーナメント」の開催地のオーガスタで行われた『UFC 11』。当時のUFCは8名によるワンデイトーナメント制で、コールマンの決勝の相手が負傷して出られなくなった。UFCは急遽コールマンとランデルマンのエキシビションマッチを組み、決勝戦の代わりとしたのだ。このとき、コールマンからランデルマンを紹介されたのが、私と彼の最初の出会いだった。
「ケビンだ、よろしく頼む」
そう言われて握手したのを、ついこの間のことのように覚えている。それ以来、私は彼の試合のほとんどを撮影している。また、エリザベス夫人から、彼のジムに大きく引き伸ばした写真を飾りたいので、オリジナル画像を貸してくれないかという連絡を貰った。その写真はヒョードルをスープレックスで投げている写真だった。やはりこの写真は、彼にとってもお気に入りの一枚だったのだろう。
「YOU! YOU! お前らのために俺は闘ってるんだよ!」
ランデルマンのPRIDE初登場は2002年9月だった。デビュー戦から3連勝したが、その後クイントン・“ランペイジ”・ジャクソンと桜庭和志に連敗。格下と見られる相手には圧倒的な勝ち方をするが、上位陣には勝てない中堅クラスといった扱いだった。
PRIDEは2004年4月からヘビー級グランプリをスタートし、エントリーした選手の中にはランデルマンの名前もあった。1回戦の相手はミルコ・クロコップ。ミルコはK-1とPRIDEの両団体で活躍し、代名詞の左ハイキックで鮮烈なKOを量産していたトップ選手だ。ランデルマンがミルコの引き立て役としてマッチアップされたのは明らかだった。
しかし試合は予想外の結末を迎えることになる。