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シーズン開幕前にスポンサーと契約終了…友野一希24歳が“正念場の1年”で考えたこと「何を弱気になっているんだろう」「さすがと言われる選手になりたい」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/04/24 17:01
フリー『喜歌劇「こうもり」序曲』の冒頭、指揮のポーズをとる友野一希。今季はスポンサー探しもする試練の一年となったが、本人は…
グランプリシリーズの初戦フランス大会ではショートプログラムで2位につけたが、フリーの7本のジャンプのうち5本で減点、1本で回転が抜けシングルアクセルに。総合順位は3位と表彰台には上がったが悔しさをにじませた。
「メダルが懸かっている中でのフリーはまだまだ難しさがあります」
自分の強さと向き合ってやっていけたら
続くNHK杯のフリーでもジャンプにミスが出て総合順位は4位、表彰台にあと一歩届かなかった。友野はこう考えたという。
「何を弱気になっているんだろうって、すごい思って。実は『自信持っていいんじゃないか』って少し思って。これからは自分に自信をもって、自分の強さと向き合ってやっていけたらなと思います」
足りないところもある。でも少しずつでも向上してきた自分もいることを認められれば変われるのではないか……、新たな境地へと至った友野が地力を示したのが全日本選手権だった。上位進出が期待される選手に失敗が相次いだフリーで、前半にジャンプの失敗があったものの崩れることなく滑りきる。結果、10度目の出場にして初めて表彰台に上る3位となった。
「たぶん気をつけないと荒れる」友野の勘
「何回も試合をこなしてきて、なんとなく勘で、6分間(練習)の雰囲気からたぶん気をつけないと荒れるというか、ちょっと独特の緊張感があって」
「『自分に集中して雰囲気に引きずり込まれないようにやれば結果はついてくるんじゃないか』と予感していたので。とにかく客観的に雰囲気や緊張感を感じとりながら、しっかり自分自身に集中して臨みました」
成功も失敗も、喜びも悔しさも、これまで経験したすべてを生かし、世界選手権代表に選出された。過去に2度出場しているが、どちらも補欠から繰り上がってのこと。自ら切符をつかみとったのは初めてだった。
やってきたことが間違いじゃなかったなと
世界選手権でも培ってきた力に間違いないことを示す。ショートプログラム7位で迎えたフリー。転倒したジャンプもあった。それでも4回転からのコンビネーションジャンプ、ショートで失敗した4回転サルコウなどを成功させる。流れの途切れないままコレオシークエンスを迎えると「気持ちだけで(足を)出しました」という滑りで場内の歓声と拍手を呼ぶ。得点は従来の自己記録を大きく上回り初めて180点台に乗せる180.73点。合計でも初めての270点台となる273.41点。6位で大会を終えた。