オリンピックへの道BACK NUMBER
村元の“オマージュ”に高橋は笑みを浮かべ…“かなだい”が3年目ラストに見せた最高の演技「フリー前に大ちゃんの『オペラ座』を観て…」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/04/18 17:19
演技を終えた後、達成感を帯びた表情を見せる高橋。村元はその直後に特別な動きを…
今大会ではアイスダンスの指導にあたるマリナ・ズエワコーチが帯同できなかったことからかわりについていた。戻ってきた高橋とハグし、村元とハグする。その光景もまた、16年という長大な時間を結ぶ一場面であった。
16年前と同じ会場で同じプログラムを演じ、同じコーチが見守っている。同じ熱量の声援と称賛が場内に渦巻く。
あの日と同じ光景が広がるなか、16年前と同様に渾身の演技を体現することができたのは、2人であったからこそにほかならない。アイスダンスで村元とペアを組んで3シーズン、たゆまず歩んできて結実した演技だった。そして16年という年月を経て、第一線にいることを改めて示した。
「やっとアイスダンサーになったね」「続けるよね」
高橋はアイスダンスに時間をかけて適応しながらアイスダンサーとしての土台を形作り、本来の持ち味も発揮するようになっていった。34歳でのアイスダンス転向に、異例の挑戦とも言われながら、種目にあわせて身体も培っていった。村元のスケーティングや表現との組み合わせが相乗効果となって、2人ならではの世界を築いてきた。1つの到達点が国別対抗戦の演技であった。
これからについては未定だ。
終わった今、先をすぐに思い描くことができないのは、今シーズンもまた、2人ですべてを懸けて歩んできたことを表してもいる。
それでもフリーを終えて、高橋は言う。
「やればやるほどお互いのことも知っていきますし、考えずとも分かり合えたり、そういったものがどんどん増えていくというのが、やっぱり続けるってこと(で生まれる良さ)だと思います。まだまだやっとそれが分かり始めたかな、っていうスタート地点なのかなと感じました」
大会が終わった15日の夜には、複数のジャッジから「やっとアイスダンサーになったね」「続けるよね」等、声をかけられた。それはある意味、最大の賛辞でもあった。
シーズンを最上の形で締めくくり、進化の証とさらなる成長の可能性をも感じさせた2人は、時間をかけて未来を描いていく。
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