オリンピックへの道BACK NUMBER
村元の“オマージュ”に高橋は笑みを浮かべ…“かなだい”が3年目ラストに見せた最高の演技「フリー前に大ちゃんの『オペラ座』を観て…」
posted2023/04/18 17:19
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
今からさかのぼること16年。
2007年3月22日、東京体育館。フィギュアスケートの世界選手権男子フリーが行われたあの日、演技後にスタンディングオベーションで称えられ、地鳴りのような歓声と拍手がこだまする空間で、涙を流した。
フリーで1位になる圧巻の演技でシーズンを締めくくるとともに日本男子最高成績となる銀メダルを獲得、表彰台に上がると笑みがこぼれた。
16年前と同じ会場で再び演じた『オペラ座の怪人』
あれから16年。
2023年4月14日、チーム単位の団体戦で行われる世界国別対抗戦のフリーダンスを終えた高橋大輔は、村元哉中とともに、実に16年を経て再び東京体育館でスタンディングオベーションの中にいた。
前日のリズムダンスでは、世界選手権でのツイズルのミスを打ち消し、終盤のリフトでもレベル4。シーズンでもベストと言ってよい演技を披露する。
迎えたフリーダンスは『オペラ座の怪人』。16年前の世界選手権フリーで、高橋が演じたのも『オペラ座の怪人』であり、形を変えてよみがえったプログラムだった。
氷上に繰り広げられたのは、シーズンを締めくくるにふさわしい演技だった。
スタートから瞬く間に場内の視線を惹きつける。ストレートラインリフト-ローテーショナルリフトはレベル4。深いエッジを駆使したスピード感あふれるスケーティング、そこから生まれるステップ、呼吸が1つになったツイズル……。その都度拍手と歓声が起こる。
絶対にいい思い出にしたい
終盤にさしかかる。コレオリフトを決めた2人は、フィニッシュ。高橋は両手を宙に突き上げる。演技を終えた地点でそれぞれに喜びを全身で表した2人は互いに近寄る。村元が高橋の背中を労うように叩き、やがてハイタッチをかわした。