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「セレブレーション中なのにファンが出口に…」オカダ・カズチカを撃破しIWGP戴冠も…新王者SANADAの「新しい景色」はどこにある?
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/04/13 17:01
4月8日の両国国技館でオカダ・カズチカを破り、第7代IWGP世界ヘビー級王者となったSANADA。「景色を変える」ための旅路はまだ道半ばだ
なぜオカダ対SANADAは「スウィングしなかった」のか?
4月8日の両国国技館は、淡々とした試合だった。結果はオカダが敗れ、SANADAが7代目のIWGP世界王者になったが、スウィングしたものにはならなかった。
3年前なら、また違う内容になっていたのかもしれない。それは残念だが、時計の針を巻き戻すことはできない。「同い年」や「ライバル」といった関係性は、コロナでのブレイクもあって長すぎる空白の期間を生んでしまった。
SANADAは逆レインメーカー、逆コブラクラッチを使った。意識したわけではないと言うが、引退した武藤敬司のシャイニング・ウィザードやムーンサルトプレスも繰り出した。
新日本プロレスの入門テストは不合格だったが、真田聖也は「武藤塾」を経て、期待の新人として2007年に全日本プロレスでデビュー。WRESTLE-1などを経て、7年前の2016年、内藤哲也のロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの新メンバーとして両国国技館でオカダを襲った。そんなSANADAがついに内藤から離れ、TAKAみちのくやタイチらの「Just 5 Guys」に合流し、IWGP世界ヘビー級王座を戴冠した。デビューからすでに16年が経過していた。新日本プロレスでは各ユニットの再編成が進んでいる。
最後はこのところフィニッシュとして使っている変形のDDT。「デッドフォール」と命名されたその技でオカダから3カウントを奪った。
筆者はみんなが言うようになった「景色を変える」という表現は好きではない。
SANADAは髭を剃り落とし、髪を短く刈って色を変え、リングコスチュームもショートタイツ姿になったが、まだ始まったばかりで、何がやりたいのかははっきりとはわからない。
王者になって、SANADAから見た景色は変わったかもしれない。でも、客席からの景色はそんなには変わっていないだろう。
まずは5月3日の福岡国際センターで、IWGPジュニアヘビー級王者の高橋ヒロムが挑戦者となった。IWGPヘビー級とIWGPジュニアヘビー級王者同士の戦いは過去にもあったが、ジュニア王者がそれを保持したままヘビー級のベルトを巻くということは実現していない。
さかのぼれば、それはIWGP以前の初代タイガーマスクの時代からの大きな夢だった。興味を惹かれるテーマだし、ヒロムにとっては2度目のチャンスだ。一方で、SANADAにとっては一つの通過点でしかない。むしろ、その先の6月4日の大阪城ホールの方がSANADAにとって試練になるだろう。