ゴルフPRESSBACK NUMBER
人種差別を乗り越えたタイガー・ウッズ、乳がんの妻に捧げたミケルソン、松山英樹とキャディの絆…マスターズ名勝負のウラにある“愛の物語”とは?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byReuters/AFLO
posted2023/04/06 11:00
松山英樹がアジア人で初めて制覇したマスターズはもう2年前の話。日本時間4月6日夜に開幕する今大会ではどんな物語が生まれるか
家族と喜びを分かち合う感動のシーンと言えば、ウッズが見事な復活優勝を遂げた2019年マスターズが思い出される。
4度の膝の手術と4度の腰の手術、戦線離脱とリハビリ生活、さらには逮捕劇も加わり、試合からも勝利からも遠ざかっていたウッズを見て「子どもたちは僕をユーチューバーだと思っていた。苦痛に顔を歪める父親を見ていた彼らにとって、ゴルフは苦痛と同義語になっていた」。
あの2019年の復活優勝は「僕にとってのゴルフの意味と僕がこの世界でやってきたことの意味を子どもたちに伝えるための勝利だった」。72ホール目を終え、長女サムや長男チャーリー、実母クルティダらと抱き合って泣いたウッズの姿は記憶に新しい。
だが、今思えば、あの2019年大会を境に、ウッズとミケルソンがマスターズの話題の中心になる時代が過ぎ去り、マスターズは新たな時代を迎えているように感じられる。
新時代を象徴するジョンソンの“リベンジ”
コロナ禍で11月に延期開催された2020年大会で勝利したのはダスティン・ジョンソンだった。
ジョンソンはメジャー大会で何度も惜敗を重ね、「キャリア最高の状態」で挑もうとしていた2017年マスターズでは、開幕直前に階段から転落して腰を強打し、泣く泣く欠場したこともあった。
だが、2人の息子を持ち、「家族のために頑張りたい」という想いを強めた彼は、あの年、無観客だったオーガスタ・ナショナルで、ついにグリーンジャケットを羽織り、静かに涙を流した。