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「PGAツアー対LIVゴルフ」マスターズが“異様な雰囲気”にならなかったのはナゼ? 選手の本音「メディアで必要のないことが…」
posted2023/04/14 17:01
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Getty Images
激しい舌戦や、見た目にも明らかな意地の張り合い。そんな下世話な話題を、ちょっぴり期待していた自分が恥ずかしくなる。
オーガスタナショナルGCで行われたマスターズは、ことしもゴルフの祭典としての格式を保ったまま4日間を終えた。優勝したスペインのジョン・ラームはこれで2023年に入って出場9試合でなんと4勝目。28歳は貫録たっぷりに世界ランキング1位にも返り咲いた。
そんなPGAツアーでいま最も強い男とぶつかったのが、LIVゴルフでいま最も強い男、ブルックス・ケプカ。昨年サウジアラビア政府系ファンドの全面バックアップで発足した新リーグの実力者である。前週のフロリダ州オーランドでの大会で優勝してオーガスタに乗り込み、最終ラウンドこそ崩れたが2位に入った。
LIVゴルフ誕生後、初のマスターズ
正直に言います。
今年に関して言えば、試合前にわくわくしていたのは、そういった純粋な、力と技による鍔迫り合いよりも、最近の事情による「きっと異様であろう」という雰囲気だった。
昨年6月にLIVができて初めて開催された今年のマスターズ。PGAツアーとの溝は依然として深い。行き来ができない互いの団体はこの1年でマイナーチェンジを重ね、とくに危機感いっぱいのPGAツアー側の改革は目覚ましい。互いのトップや中心選手による真っ当な主張から、議論と言うには見窄らしい、難癖の付け合いも繰り返されてきた。
毎年恒例、火曜日のチャンピオンズディナーの参加者にはLIVに籍を置く選手もいる。パー3コンテストは? 初日からの組み合わせは? 野次馬根性、勇ましく、状況が把握できると嬉々として悪いカオで見ていたが、練習ラウンドからPGAツアーのリーダー格であるロリー・マキロイと、ケプカが仲良く同じ組で回っていたというから拍子抜けもいいところ。
昨年7月に全英オープンを制してすぐにLIVを主戦場としたキャメロン・スミスは、練習場でPGAツアーの選手たちとハグや握手を交わした。「自然とそうなったんだ。なにかを期待していたわけではないけれど、自分自身のためだけではなく、ゴルフというスポーツのためにもそういう態度でありたかった。最近は特にメディアで必要のないことが進行しているように思う」と、試合前から喧騒に釘を刺すように語っていた。