オリンピックへの道BACK NUMBER
村元と高橋は互いの背中に腕をまわした…“かなだい”が感じた『オペラ座の怪人』を一緒に滑れる幸せ「一人で滑るより喜びが2倍、3倍」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/03/29 17:00
世界選手権のフリーダンスで演技をやりきり、村元哉中に感謝思いを伝えながら背中に腕をまわし抱擁をかわした高橋大輔
「今回、特にフリーは自分たちの満足のいく演技ができて、一人で滑るより喜びが2倍、3倍。一緒に物事を創りあげていくってこういうことなんだなってあらためて感じました」
ただし、喜びに浸っているばかりではなかった。試合の翌日、高橋の心持ちにやや変化があった。
「あと2点差ないくらいだったので。フリーの演技後ははしゃいでいましたけれど、落ち着いたら悔しさが出てきました」
募る「悔しさ」は、この先を想起させる
2点差とは、日本のアイスダンス出場枠「2」を確保することを意味する目標の10位までの点数だった。
アイスダンスに転向して3シーズン、高橋は当初あったさまざまな懸念――村元と体格にさほど違いがないこと、ルールの違い、用具の違い、34歳で新しい種目に挑戦する高橋自身の年齢――を鮮やかに吹き飛ばす演技を見せてきた。村元と高橋は、日本のアイスダンスにたしかな足跡を残した。
大舞台は幕を閉じたとはいえ、シーズンもまだ終わったわけではない今、まずはシーズンを全うすることに集中してもいるだろう。
それでも、シングルの頃と変わらない先駆者たるこの3シーズンの足どりとその結晶でもある『オペラ座の怪人』、募る「悔しさ」は、この先を想起させるようでもあった。
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