オリンピックへの道BACK NUMBER
村元と高橋は互いの背中に腕をまわした…“かなだい”が感じた『オペラ座の怪人』を一緒に滑れる幸せ「一人で滑るより喜びが2倍、3倍」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/03/29 17:00
世界選手権のフリーダンスで演技をやりきり、村元哉中に感謝思いを伝えながら背中に腕をまわし抱擁をかわした高橋大輔
「最初は緊張感がありましたけど、コレオステップからオペラ座の世界観に入りました。最後のダイアゴナルの途中くらいかな、お互い顔を見て笑っていたのかな。『行けるぞ!』みたいな」
重なり合うような言葉は、2人が同じ世界を目指して、さらなる高みへと同じ歩調で進んできたことを示していた。
滑っているひとつひとつの瞬間が幸せ(村元)
昨シーズンの世界選手権が終わったあと、競技続行を決めるまでにしばらくの時間を要した。1シーズン、全身全霊を懸けて取り組み、要したエネルギーは大きかっただろう。
だが、高橋が語った言葉、「これで100%ではないと感じていて、まだ成長過程なんじゃないかと思っています」は「予兆」のようでもあった。
5月に続行を発表すると、進化を期して歩んできた。試合のたびに反省の言葉があり、浮かんだ課題をつぶしながら進んできた。その末に演じきった世界選手権の『オペラ座の怪人』は、2人の努力へのおくりものでもあったかもしれない。
「自国開催の世界選手権でこんな演技を出せるまでになったのはほんとうにすごく喜びというか、成長というか、哉中ちゃんが誘ってくれなかったらアイスダンスをすることはなかったので、いろいろな意味で感謝があります」(高橋)
「大ちゃんのシングル時代の『オペラ座の怪人』のプログラムがほんとうに強く印象に残っているので。日本開催の世界選手権で一緒に滑れるとは想像もしていなかったです。ただただ滑っているひとつひとつの瞬間が幸せでした」(村元)
一人で滑るより喜びが2倍、3倍
高橋は転向して3シーズンを経て、アイスダンスに抱く思いも語っている。