オリンピックへの道BACK NUMBER
村元と高橋は互いの背中に腕をまわした…“かなだい”が感じた『オペラ座の怪人』を一緒に滑れる幸せ「一人で滑るより喜びが2倍、3倍」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/03/29 17:00
世界選手権のフリーダンスで演技をやりきり、村元哉中に感謝思いを伝えながら背中に腕をまわし抱擁をかわした高橋大輔
冒頭からシーズンベストと言ってよい滑りを見せた全日本選手権では、最後のコレオリフトでバランスを崩し転倒、惜しくも記録更新はかなわず。2月の四大陸選手権では1800mの高地にある会場のため薄い酸素に苦しんだ。
1つのマイナスもつかない完璧な演技
迎えた世界選手権、リズムダンスは11位。
フリーダンス、『オペラ座の怪人』がスタート。高橋が扮する怪人の仮面をはぎとる印象的な振り付けから始まりリフトを決めると、場内に大歓声が起こる。6分間練習から、いや公式練習から後押ししていた声援がひときわ大きくなる。その光景は高橋のシングル時代と今をつなぐようだった。
一つ一つのエレメンツを滑りながら、たしかなストーリーを刻んでいく。
終盤を迎える。ダイアゴナルステップに続くのは「オペラ座の世界観を最後の締めでしっくりくるのがなかったので」(村元)、これまでと変えてきたコレオリフト。ここまで苦しんできた最後の要素も成功させる。
採点表に1つのマイナスもつかない完璧な演技は115.95点の自己ベスト、『オペラ座の怪人』はついに求める表現となって成就した。その2人に、見守った人々はスタンディングオベーションで惜しみない称賛をおくった。
「行ったれ!」(高橋)「行けるぞ!」(村元)
「素直にうれしいです、ほんとうに。ミスなく演技をすることができて、最後までオペラ座の世界観に入り込んで、エネルギーが切れずに、途中くらいから『行ったれ!』という感覚で。納得のいく演技ができてうれしく思います」
高橋が言う。村元も続いた。