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WBC米国代表も驚いた大谷翔平の二刀流…2年前の球宴で語った「冗談かと思ったよ」「この男はどうやって明日投げるつもりだろう?」
text by
ブラッド・レフトンBrad Lefton
photograph byGetty Images
posted2023/04/02 17:00
2021年のMLBオールスターのホームランダービーに出場した大谷翔平。キャッチャーは水原一平通訳が務めた
最後に、話を再びフリーマンに戻そう。実は彼自身も高校生までは「二刀流」で、ピッチャーとしても95〜96マイルを投げる豪腕だったという。視察に来たスカウトたちにとっては、選手がスピードガンに100マイル近い数字を叩きだせば、どんなにいい打撃技術を持っていても、その選手をピッチャーとしてしか見られない。だから、ほとんどのメジャー球団はフリーマンをピッチャーとしてドラフトしたがっていた。その打撃を評価していた数少ない球団のひとつがブレーブスだったのだ。
「当時はメジャーで二刀流という発想すらなかった」
カリフォルニア州南部出身のフリーマンは少年時代、地元のエンゼルスの大ファンだった。もし当時のエンゼルスに大谷がいたら、彼の野球人生にどのような影響を与えただろうか、と訊いてみた。
「大ファンだったに違いないね。でも、僕自身が二刀流として育つことができたかと言われると、当時はメジャーで二刀流という発想すらなかった。誰も投打両方ができると思った人はいなかったし、絶対に話題に上がらない、あり得ない話だったんだ。あと、僕の場合は高校で投げさせられすぎて既に肘が痛くて、実はピッチャーを止めてバッターに専念したかった。だから、ブレーブスはバッターとして認めてくれて感謝してるんだ」
当時のフリーマン少年が二刀流としてプロを目指すことはなかった。しかし、大谷を見て目を丸くしていたチャーリー君のような今の子どもたちには十分に可能性がある、とフリーマンは言う。
「大谷のお陰で扉が開いたと思うし、子どもたちの野球人生に大きな影響を与えるだろう。でも、今のアメリカでは二刀流を育成するノウハウがない。通常は4〜5年、マイナーでプレーしたらメジャーに上がってくるけど、その間に二刀流の選手が育成されるかと考えると……今は難しいと思う。だからショウヘイみたいに、考え方の違う国からアメリカに発想が持ち込まれるのを待つしかないのかもしれない。ただ、これからショウヘイの影響でアメリカでもマイナーに育成方法が作られていく可能性はある。間違いなく言えるのは、将来、チャーリーのような野球人の卵が二刀流として活躍できる道ができたということ。そのことを僕はすごく感謝しているんだ」
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