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WBC決勝進出で身を固くした男・今永昇太(29歳)はなぜ米国との頂上決戦に抜擢されたのか?「僕ひとりだけ緊張していたと思います」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/21 20:30
WBC決勝のマウンド託された今永昇太(中央)。準々決勝のイタリア戦でもリリーフで好投を見せ村上宗隆(左)、源田壮亮(右)に激励をうけた
今永抜擢の背景
1次ラウンドの韓国戦ではダルビッシュ有投手とセットとなる“第2先発”で3回を投げ、1本塁打は打たれたが高回転でキレのいい速球とカットボール、チェンジアップを駆使して3回を3安打1失点。16日のイタリアとの準々決勝でも1イニングを投げて無安打2奪三振という投球を披露している。
投球内容の質が高く、先発候補だったダルビッシュの調整が遅れていることもある。そこで急遽、大一番の先発に抜擢された。
今永の抜擢はそんな背景だった。
ただ、これまでと違って、この準決勝からの相手はメジャーリーガーがずらっと揃った“本物”である。
準決勝のメキシコ戦でも、打線は先発左腕のパトリック・サンドバル投手に手こずりなかなか点を奪えなかった。そして投手陣も先発の佐々木朗希投手と2番手の山本由伸投手が、いずれも長打を浴びて手痛いところで失点を繰り返したのが、苦戦の原因だった。
「2回り目で捕まっちゃったんで、1回り目に成功したの(配球)でいくんじゃなくて、もう少しアレンジというか、プラスアルファでいけた方が良かったのかな。そこが反省点です。ただ明日は、今永も長く引っ張るつもりはないと思うし、とにかくいけるところまでいくだけですから」
「頂上対決なので楽しむ気持ちが大事」
こう語ったのは女房役の中村悠平捕手だった。ただ相手は地元アメリカで、決勝戦は球場全体が凄まじいアウェーになることも目に見えている。
「やっぱりメキシコ戦でもそういうアウェー感に興奮して、球場の流れ、雰囲気で一気に5回まであっという間に過ぎた感じがしますし、ちょっと浮き足だったところもあった。その雰囲気に流されないこと。頂上決戦なのでそれを楽しむという気持ちが大事だと思います」
もちろん今永の後には、山本と佐々木以外の全投手が待機して総動員で試合に臨む。米国では登板予定がないと言われていた大谷も、「投げられるなら投げたい」と最後のマウンドに意欲を見せている。
一方で本来なら先発の可能性があったはずのダルビッシュもリリーフでスタンバイすることになるが、第2先発としてマウンドに上がるのか、それとも準々決勝のように終盤の大事な局面になるのかが明らかにはなっていない。