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WBC決勝進出で身を固くした男・今永昇太(29歳)はなぜ米国との頂上決戦に抜擢されたのか?「僕ひとりだけ緊張していたと思います」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/21 20:30
WBC決勝のマウンド託された今永昇太(中央)。準々決勝のイタリア戦でもリリーフで好投を見せ村上宗隆(左)、源田壮亮(右)に激励をうけた
決勝に先発する左腕・今永昇太投手だ。
「周東がホームインした瞬間に次の日の先発のことを考えていました。だから喜ぶというよりか、たぶん僕だけ、1人だけ、緊張したと思います」
今永が栗山英樹監督から決勝戦の先発を申し渡されたのは、準々決勝を勝ち上がって米国にやってきた翌3月18日の練習中だったという。
「先発で行くので、恐れるものなくいってくれ」
監督の言葉に今永は静かに頷いた。
”投げる哲学者”大一番の先発マウンドへ
「少しだけ予想していた部分もあったので、まあ期待に応えたいなという気持ちでしたね。決勝戦は総動員になると思うし、初回からしっかり飛ばして、いけるところまでいくということなので(マウンドに向かう気持ちは)変わりはないです」
“投げる哲学者”の異名通りに、気負うことなく落ち着いた様子で、大一番の先発マウンドへの気持ちを今永はこう語った。
相手は優勝候補の本命とも言われてきたアメリカである。1次ラウンドはメキシコに敗れて2位通過。準々決勝のベネズエラ戦も大苦戦の末に9番のトレイ・ターナー内野手の逆転満塁本塁打で9対7と辛勝してきた。しかし20日のキューバとの準決勝では3番のポール・ゴールドシュミット内野手の本塁打など14安打14得点と自慢の打線が爆発。キューバをなぎ倒してのファイナル進出である。
その米国を倒して、侍ジャパンが頂点に立つためには、投手陣がどこまであの強力打線を抑え込み、先取点を許さずに接戦に持ち込めるかがポイントとなってくる。
そこで栗山監督が選択したのが、今永というカードだったのだ。