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「大谷翔平のこんな姿、珍しいな」番記者がWBCで感じた“エンゼルスの大谷”との違いとは?「ベンチの最前列で高校球児のように…」 

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阿部太郎

阿部太郎Taro Abe

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photograph byNaoya Sanuki

posted2023/03/20 17:09

「大谷翔平のこんな姿、珍しいな」番記者がWBCで感じた“エンゼルスの大谷”との違いとは?「ベンチの最前列で高校球児のように…」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

WBC、そして侍ジャパンへの情熱を隠そうとしない大谷翔平。シーズンを通じて取材する番記者が、“エンゼルスの大谷”との違いについて綴った

 そしてふたつ目が、ベンチの最前列に陣取ってチームメートを鼓舞する姿だ。大きな声を張って周囲を盛り立て、ときには助言を送る。シーズンではベンチ裏に引っ込んで準備をするケースも多いが、今回は高校球児のようにベンチでも白球を追い、チームメートとの時間を共有している。

 村上宗隆が15打席目にようやくWBC初安打を打ったときは、村上がベンチに戻ってくる前に転がっていたボールを拾い、「ダミーの記念球」を渡して和ませた。昨季、オークランドでメジャー通算100号を放った際に、ジョー・マドン前監督からダミー球を手渡されたが、同じ仕掛けを侍ジャパンで発動。悩める主砲をリラックスさせた。

 村上は大谷から「『いい進塁打だよ、そういうのが大事だよ』と声をかけてもらった」と話していた。

 孤高の存在ではなく、気軽に声をかけ合い、ジョークを交わす仲間として。「スーパースターの大谷翔平」という周囲の見方を、自ら破っているようにも映った。チームが一つになるために。

アメリカでも日本でも大谷の周りには「笑顔」が

 3月15日。イタリア戦の前日練習のことだった。

 選手、監督、コーチ、そしてメディアにも緊張感が漂う。そんな中、イタリア戦に先発登板する大谷がグラウンドに現れた。

 一瞬、張り詰める空気――しかしそこで、大谷は練習中にエンゼルスでも見せる得意のモノマネを発動した。山本由伸の目の前で、セットポジションから首を縦に振り、投げる動作まで。特徴をうまくつかんでいた。

 少し癖の強いモノマネは大谷の得意技のひとつだ。昨季は、赤ちゃんを抱っこするように腕を揺すって投げる「ゆりかご投法」で知られるアストロズの右腕ルイス・ガルシアの前で、独特の動きをコピーして話題になった。

 エンゼルスでは同じくモノマネ好きのホセ・スアレスと対決する姿を目にする。スアレスは「大谷はどんな投手のマネでもできる」と、その器用さに舌を巻く。侍ジャパン合流前も、キャンプで「モノマネ対決」が繰り広げられた。

 米国でも、そして、この国を背負ったWBCでも、大谷の周りには笑顔が溢れる。

「まずは野球を楽しみたい」

 大谷の口癖だ。

 いつもとは違う、むき出しの闘争本能でチームを鼓舞する姿勢を見せるが、野球を楽しむ姿は変わらない。

 その姿が、これまでとは違った侍ジャパンの強さを引き出しているようにも見える。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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