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井上尚弥vsフルトン急転直下の“最高級のカード”はなぜ実現した? 米識者たちが明かす舞台裏「フルトン本人が反対する陣営を説得した」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2023/03/08 11:06
スーパーバンタム級としての初戦が決定した井上尚弥。相手は王者スティーブン・フルトンだ
「今戦は真の意味で50/50の一戦だと考えています。井上は“完璧なボクサー”という称号に最も近いところにいる選手。フルトンにとっての好材料は、常にフェアな採点が出る日本では判定問題を心配する必要がないこと。あえていうなら、これまで階級を上げてもパンチの効果を保ってきた井上がわずかに優位かもしれません。ただ、現時点で予想をするのは難しい試合です」
ドノバン記者のそんな見方に同意しないファンは日本には多いかもしれないが、アメリカには同様の予想を展開する識者が他にも存在する。バンタム級での“ラスボス”だったノニト・ドネア(フィリピン)とは違ってフルトンは今まさに全盛期にいること、盛んに指摘されている通りにかなりの体格差があることなど、井上にとっての不安要素が散見するのも事実ではある。
結局は“モンスター”が優位としても、少なくともこれまでの井上の多くの試合とは一線を画し、“どんな勝ち方をするか”ではなく、“まずしっかりと勝てるのか”が見どころになる数少ないタイトル戦であることは確かに違いない。
無敗の前・現統一王者同士が激突する5月7日の世界タイトルマッチは、ボクシングファンへの新たな贈り物。予想外の形でもたらされた一戦の内容、結果は日本のみならず、軽量級の歴史の中で特別な意味を持つ。井上のキャリアの中でも恐らく最も難しく、最も重要な戦いのゴングまで、もうあと2カ月である。
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