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「大谷翔平の通訳さんがナゼWBCに?」水原一平氏の“ベンチ入り”は栗山監督たっての希望だった…本人が明かす「“31人目の侍”の多すぎる仕事量」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2023/03/06 17:18
通訳の水原一平氏も大谷翔平とともに侍ジャパンに合流。本番でも通訳として重要な役割を担うという
大谷と“一平さん”が共にベンチ入りする理由
実は専門の通訳がWBCで日本代表のベンチに入るのは、5大会目にして初めてとなる。過去4大会では、マネージャーとしてチームを支えたNPBの職員の中村匡佑氏が流暢な語学力を生かして通訳を兼任していた。第1回大会では、あの歴史的な瞬間にも立ち会っている。
第2ラウンド1組初戦、優勝候補のアメリカとの戦いで、3-3の8回1死満塁のチャンス。岩村明憲がレフトフライを打ち上げ、三塁走者の西岡剛がタッチアップからホームを駆け抜けた。ところが「三塁走者の離塁が早い」とのアメリカ代表のバック・マルティネス監督の抗議を受け、球審のボブ・デービッドソンがあっさりと判定を覆した。当時の王貞治監督がすかさずベンチから飛び出し珍しく猛抗議した時、間に入って通訳したのが中村氏。「世紀の大誤審」と言われるこの場面で、通訳は陰の主役となった。
今回のWBCでも外国人の審判員を相手に、大事な局面で水原氏が栗山監督をサポートする場面が出てくるはずだ。さらに、「先発ピッチャー大谷が交代後、そのまま野手に入って……」など、二刀流起用ならではの審判への複雑な伝達の場面でも、その言葉を伝えるのが水原氏となる可能性が高い。新しい日本野球の象徴であるヌートバーの代表入りをきっかけに、大谷と“一平さん”が共にWBCでベンチ入り、というシチュエーションが叶ったというわけだ。
「水原氏の情報網」も日本代表の戦力
水原氏には、他にも特命がある。
「翔平もそうだし、ダルビッシュ(有)もそうだし、いろいろな話を聞ければと思っています。一平にももちろん期待していますよ。分析、なんて言うとカッコ良すぎるけどね。守備の場面でも、相手バッターの特徴とかそういうことを含めて情報を聞ければ」
そう話すのは日本代表の城石憲之コーチだ。
今回の侍ジャパンは、相手チームの情報分析を民間企業のアナリストが担当している。前回大会までとは違い、ベンチ入りする代表専属のスコアラーが不在となるため、現場では城石コーチや白井一幸ヘッドコーチがアナリストが作った資料をもとに指示を出すことになる。攻撃の場面での相手投手の攻略法だけでなく、守備の場面でも相手打者の打球の方向や癖などの情報は命綱となる。そんな局面で頼りになるのが、メジャー選手の特徴を知り尽くした水原氏の情報網というわけだ。