濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「基礎がない」「正直こんなもんか」人気団体スターダムが“外敵”の参戦で問われる実力…橋本千紘との対戦を狙う朱里の“真の目的”は?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byMasashi Hara
posted2023/03/03 17:00
2月4日のスターダム大阪大会でMIRAIに勝利後、朱里と火花を散らした橋本千紘
赤いベルトを巻いた直後のインタビューで、朱里は「他団体の選手とも防衛戦がしたい」と語っていた。たくさんの団体で試合をしてきたから、スターダム以外にも魅力的な選手がいることを知っている。自分とスターダムで闘うことで、彼女たちにもっと輝いてほしい。朱里はそう考えていた。「女子プロレスはスターダムだけじゃない」と、スターダムのチャンピオンになった朱里も思っていたのだ。だから、ベルトは失ったが橋本にアプローチした。
「もっとたくさんの人に橋本千紘を見てもらって“こんな凄い選手がいたのか”と思ってもらえたら嬉しいです。私はもっと女子プロレスを盛り上げたい」
“強さの象徴”とスターダムの闘いの行方は…
格闘技で実績を残した朱里だが、自分はプロレスラーであるという自負も強い。格闘技の試合に取り組んだのも、体が細くて弱々しく見られがちだった自分の“プロレスラーとしての強さ”を示すためだった。格闘技界に乗り込む姿を一番見てほしいのは、プロレス界の人たちだったと朱里は言う。プロレスの師匠はTAJIRIとKUSHIDA。格闘家がプロレスをやっているとは絶対に思われたくなかった。
実は、橋本にも似たような背景がある。仙女の入門テストを最初に受けたのは中学生の時だ。入門が内定したものの柔道かレスリングを勧められ、結果として大学までレスリングに打ち込むことになった。橋本は単にレスリング出身のプロレスラーなのではなく、プロレスラーになりたいからこそレスリングを学んできた。
「だから橋本との闘いは、強さを競うだけじゃない。試合の勝ち負けだけでもない。すべての面での“勝負”だと思ってます」(朱里)
どちらがより会場を沸かせ、観客に印象を残すか。プロレスラーとしての魅力、能力の総力戦になると朱里は考えている。やりたいのはレスリングの強豪vs格闘技のチャンピオンというだけではない「プロレスならではの闘い」だ。橋本とならそれができると思ってもいる。
「橋本は見せるという部分でも、凄く魅力のある選手なので」
確かにそうだ。橋本はプロレス界でしっかりと強さを示してきた。だが“強いだけでは強いと思われない”のがプロレスの世界の難しさ。橋本は強さを“見せる”、“伝える”能力にも長けていたからこそトップレスラーになったのだ。
MIRAI戦に続いて、ひめかと橋本の試合も「フラットな気持ちで見たい」と朱里。スターダムの選手に頑張ってほしいという気持ちもあるし、自分が闘いたい橋本に負けてほしくないとも思う。スターダム2試合目のひめか戦を経て、橋本千紘という“強さの象徴”がどれだけ花開き、輝くか。その輝きを朱里が直接対決で上回ることはできるのか。そこにも、シビアで激しい“闘い”がある。
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