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「アメフトでもNFLを狙えた」ヌートバーはなぜ野球を選んだのか? 本人に聞いた“決定的な理由”「フットボールは大好き。でも…」
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph byGetty Images
posted2023/03/02 17:00
写真は高校時代のラーズ・ヌートバー。野球だけでなく、アメリカンフットボールでも将来有望なQBとして注目を集めていた
ヌートバー本人が語る「野球を選んだ理由」とは?
ヌートバーはなぜその時、野球を選んだのか。
本人に直接聞いた。怪我ももちろん理由のひとつだが、彼にはもうひとつ、決定的な理由があった。
「最終的に野球を選んだのは、私が野球一家で育ったからだと思う。自分の人生は野球に捧げられているのかな、って。野球の方がアメフトよりも長くやっていたし、何かがいつも自分に語りかけていたんだよ。『あなたには野球が合っている』と」
アメフトへの思いがないわけではない。
「フットボールが恋しいし、大好き。でも、野球が一番なんだ。母も野球の方が好きだし、そういうことも関係しているのかもね。たしかに高校時代にフットボールで大きな怪我をした。でも、それは『野球に行った方がいいんじゃないか』って最後の決定打みたいなもの。野球ならタックルされることもないからね(笑)」
父のチャーリーさんは大学まで野球選手だった。母の久美子さんも高校時代、埼玉の松山女子高校でソフトボールに打ち込んだ。
ヌートバーの“最初の指導者”は久美子さんだ。「こう打つんだよ」と、手取り足取りフォームを教えた。
「最初のバッティング、裏庭で教えたのは私なんですよ。(型は)日本野球のスタイル。王さんの一本足打法、小さい時からかっこいいと思っていたもんなあ……」
自宅の裏庭で、親子で日が暮れるまで野球をして遊んだ。
最近、久美子さんが高校時代のソフトボール仲間から言われてびっくりしたことがある。
「ラーズ君の打撃フォーム、昔のえのき(久美子さんの“榎田”姓からついた愛称)にそっくりなんだよね」
メジャーリーグで足を高く上げてタイミングを取る選手は少ないが、ヌートバーはそうする。小さい頃に母から教えられた“日本スタイル”の影響が、色濃く出ているのかもしれない。
両親が大好きなヌートバーが野球を選択したのは、やはり必然だったのだ。
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