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「迷わず行けよ、ユッケばわかるさ」アントニオ猪木が行きつけの焼肉屋で見せた“かわいい姿”とは? 病床で目を輝かせた“豚足秘話”も
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/02/20 11:01
アントニオ猪木が愛した麻布十番『一番館』の豚足。店主の江原静江さんは「猪木さんは豚足を焼いていました」と回想する
「大きな体で海苔の上にご飯とチャンジャを…」
昨年の9月半ば、筆者が猪木さんの家を訪ねたとき、友人の武元誠さんがうなぎ弁当を持ってきてくれていたが、猪木は豚足の話に目を輝かせた。「3日後に来る時に持ってきますよ」と武元さんが答えていた。
「豚足、お好きでしたねえ。9月に2回、最後は5本持っていかれました。通常はカットして出しますが、猪木さんはその豚足を焼いていました」
江原さんにそう言われて、焦げるくらいよく焼いてみると、油が出てきてうまい。そのまま食べる豚足と焼いたものは別物だ。猪木は醤油をつけて焼いた時もあったようだ。やはり、猪木はうまい食べ方をよく知っていると思った。
猪木はニンニクも好きだ。まだ猪木が現役だった時代、新日本プロレスの道場で練習を終えた猪木と、合宿所でちゃんこ鍋を囲んだ。いい肉がたくさん入ったものだが、一口食べた猪木がおっという顔で、嬉しそうに言った。
「これは利いてるなあ」
鍋の中にはニンニクがこれでもかというほど、切らずにゴロゴロという感じで入っていた。
「以前はズッコさんが猪木さんの健康を気遣って、食事中もずっと顔を見ていたのですが、ズッコさんの体調が悪くなってからは、猪木さんがズッコさんの顔を見ていて、少し部屋の温度を上げてほしい、と言ってきたこともありました。元気なころは、帰りに車で帰るときも、新婚さんみたいに、猪木さんの膝の上にちょこんと座っていました」
猪木の印象的な食べ方も、江原さんはよく覚えているという。
「お皿に小さい海苔を載せて、その上にご飯を載せて、さらにチャンジャを載せて巻いて食べる。猪木さんは大きい体で、そんな細かい作業をしていました。とてもきれいに食べるんです。その姿がすごくかわいいんですよ」
これも小さ過ぎる“猪木スペシャル”か。
江原さんは猪木が座っていた席を見つめて言った。
「最後にお店に来てくれたのは、コロナが始まった2020年4月。あまり歩けないからと言って、入口の席に座りました。その後はずっとテイクアウトでした。猪木さんは本当にチャーミングで、懐の深い方でした。やっぱり寂しいです」
<#4に続く>
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