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元DeNA倉本寿彦の告白…“1つのエラーで急増した”バッシングに「心が痛まなかったわけじゃない」あの“セカンド転向”に何を思ったか 

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日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph byNaoya Sanuki

posted2023/02/21 11:02

元DeNA倉本寿彦の告白…“1つのエラーで急増した”バッシングに「心が痛まなかったわけじゃない」あの“セカンド転向”に何を思ったか<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

昨年、横浜DeNAベイスターズから戦力外通告を受けた倉本寿彦、32歳。在籍8年間をNumberWebの取材で振り返ってもらった

 こちらの質問に対して「やっている本人にしか分からない」「言いたくない」と突っぱねる。なお食い下がると、通り一遍のことを口にした最後に「以上です」と突き放すように付け加えた。

 そのことを伝えると、倉本は「それは(本来の)ぼくじゃないです」と苦笑したが、遊撃手としてフルイニング出場を果たした直後のコンバートの可能性に、割り切れない思いを募らせていたことは事実だった。

 開幕後、二塁手として出場を重ねながら、やはり気持ちは晴れなかった。そして、あのプレーが起きる。

 5月29日の楽天戦、茂木栄五郎が放った打球は球足の速いゴロとなって倉本の正面に飛んできた。普通なら難なくアウトにできる打球だったが、送球が一塁手に届くより一瞬早く、茂木はベースを駆け抜けていた。

 当時の心理状況が、あのプレーに表れてしまったのではないか――。そんな見立てを、倉本は否定しなかった。

「そうですね……。もちろん、試合に対しては100%の準備をしていましたし、良いプレーをしたいと思ってグラウンドに立っていました。ただ、あの当時を振り返ってみると、やっぱりもやもやしていたところはあった。それがきっと、ああいうプレーにつながってしまったんです」

守備を揶揄する声に「やっぱり人間なので…」

 この一件は倉本をより厳しい状況に追い込んだ。2日後に登録抹消。それだけでなく、ネット上でのバッシングの格好の材料とされた。前年から倉本の守備を揶揄するコメントがSNSなどでしばしば見られるようになっていたが、投稿者たちは「それ見たことか」と言わんばかりに悪辣な言葉を嘲りとともに投げつけるようになった。

 その後も降りかかり続けた悪意の矢。倉本の心は無事だったのだろうか。

「どうなんですかね。ぼくは、めっちゃ人を見るんですよ。仲が良い人には心を開くけど、そういう(投稿をする)人たちには心を開かない。だから、大丈夫だと思います。ぼく(の領域)に入ってこないので。勝手に言ってたらいいじゃんと思うし、言うんだったら直接言いに来てほしいなとは思います」

【次ページ】 好転しかけた20年。しかし…

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