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「ユヅの頼みなら無条件でイエス」震災追悼アイスショーも出演予定のジェイソン・ブラウンが“日本の大会”で復帰を決めた日《独占インタビュー》 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2023/02/09 17:01

「ユヅの頼みなら無条件でイエス」震災追悼アイスショーも出演予定のジェイソン・ブラウンが“日本の大会”で復帰を決めた日《独占インタビュー》<Number Web> photograph by Getty Images

全米選手権で約1年ぶりの復帰を果たし、2位となったジェイソン・ブラウン。日本でも人気の彼に、独占インタビューを行った

1年ぶりの復帰「身体を痛めつけることは少し控えて…」

 およそ1年ぶりで復帰した全米選手権に出場した時、どのような気持ちだったのか。

「試合に出ていなかったとはいえ、アイスショーはたくさんこなし、毎回全力を尽くして滑っていたので、全米選手権で観客の前に立った時は緊張せずにそれなりの自信がありました。アイスショーでは、自分ではコントロールできない色々なことが起きます。日に二度ショーをして身体が疲れている、リンクが狭い、スケートの刃が鈍っていた、衣装が破れたなど。それでも与えられた条件でベストを尽くします。そうした経験を経てきていたので、全米もそれほど力まずに自分にできるだけのことをやるぞ、と思って出ました」

 SPでは完璧な演技を見せて、ISU非公認とはいえ100.25を獲得。3コンポーネンツは、限りなく満点に近い49.84だった。フリーでは2度の3アクセルを含む演技で、SP、フリーを通してほぼノーミスで滑り切った。

 ブラウンといえば、抜きん出た音楽表現と鍛えられた踊りの能力、身体の柔軟性を駆使した密度の濃いプログラムで評価を受けてきた。その一方、過去4年間、大会でなかなか4回転を成功させることができずに苦しんできた。全米では挑まなかったが、今後また4回転に挑戦する気持ちはあるのだろうか。

「今年は自分の身体の健康を取り戻す年にしたんです。あまり公にしてこなかったけれど、過去4年間、体力の限界をプッシュし続けて、他のスケーターも同じだと思いますが、いくつか怪我もしてきました。今季は引き続き自分のできるベストを尽くすことはもちろんですが、身体を痛めつけることは少し控えて、足首や骨の強化などを重視して調整することに時間を費やしています。将来どうするかまだわからないけれど、競技を続けていくのなら完全な健康体を取り戻すことは最優先事項。だから今は4回転にはエネルギーを向けずに、身体をリセットしているんです」

マリニンとは10歳差「気がついたらベテランに」

 ネイサン・チェンをはじめ、今季は彼が競ってきたトップの多くが抜けた。そんな中で若手たちと戦うのはどんな気分だったのだろうか。

「自分がベテランになったということが、未だに実感できないんですよね」と笑う。「試合に出ていると、次、さあ次、と先のことばかり考えるので過去を振り返る余裕はない。でもおっしゃる通り、国際的にみても僕がジュニアの頃から競ってきた選手のほとんどはもう競技に出ていません。気がつくといつの間にか、自分がベテランになっていました」

 全米選手権で初優勝したイリヤ・マリニンは、ブラウンより10歳年下の18歳。3位のアンドリュー・トルガシェフは21歳だ。

「全米では若い新しい世代と戦って、もちろん自分のベストを尽くしたいと思ったのですが、何よりも彼らはチームメイトだという仲間意識を強く感じました。彼らが成し遂げたことは、素晴らしいと思う。僕は過去の経験を生かして、彼らが自分の能力を最大限に伸ばせるように相談にのったり、メンターのような役割も果たせたらと思っています」

 ブラウンは今シーズン、イタリアのダニエル・グラスルに依頼されて彼のSPの振付を担当した。今後、自分の演技だけではなく若手のサポートにも手を貸していきたいのだという。

【次ページ】 「ユヅの頼みなら、無条件でイエス」アイスショーにも出演

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