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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「ジュリアvs鈴季すず」はなぜ“最高に映える”タイトルマッチだったのか? 試合直後の“姉妹”が明かしたそれぞれの「25分4秒」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/02/11 11:04
2月4日、ジュリアと鈴季すずのタイトルマッチが終わると、2人は互いの手を握った
試合中にジュリアが思い出した「練習生時代」
他の選手にはない経験で強くなったすずを、ジュリアは上回ってみせた。スタンドではパンチや頭突きを叩き込み、グラウンドで肩を集中攻撃。グロリアス・ドライバーをカウント2で返されると、ノーザンライト・ボムで試合を終わらせた。
「久々の感覚でしたね。シングルのベルトの防衛戦は2年ぶりくらいですか。“あぁ、この感覚だ”って。興奮しますね。赤と白、ベルトの違いはあるにせよ“私はチャンピオンなんだ”っていう、あの感覚を思い出しました」
ジュリアにとっては、決して“王者の貫禄”で勝った試合ではなかった。だがすずは「やっぱり赤のチャンピオンは強い」と感じたそうだ。
「前回、リーグ戦でやった時とは別人に感じました。赤いベルトの防衛戦を、心から楽しんでるジュリアがいましたね。赤いベルトを巻くのがどういうことなのかが伝わってきた気がします。今回はチャンピオンがジュリアだから挑戦したんです。でも終わってみて“このベルトがほしい”という気持ちが強くなりました。ベルト自体も目標です。赤いベルトを巻くことで、自分も何かが変わるんじゃないかと」
ジュリアは、試合中にあることを思い出したという。
「昔に戻ったという感じはなかったです。お互い、新人時代とは何もかも違う。すずは私がしてない経験をして強くなった。でも私もすずがしてない経験をスターダムでして、先を行っているという自負がある。ただ、闘いながらすずが練習生だった頃を思い出したんですよ。すずは天才なんです。他の選手が何度も何度も、場合によっては何カ月も練習してやっとできるようになる動きが、パッとできてしまう。“やってみたらできました”みたいな感じで。受身もそう。ムーンサルトだったりスワンダイブも。試合では見せないくせに(笑)。
この子は手強くなるって思いましたね。関係としては姉と妹だけど、いつか闘う時がくる、そう思ったんです。そして今回まさにその時が来た。だから姉妹という感情は捨てて闘いましたね。じゃなきゃベルトを落としてたかもしれない。それくらい、すずは強い」
“ジュリアvs鈴季すず”の物語
もうただの妹じゃない、ライバル。ジュリアはそう言った。試合後のリング上では、すずの「隣に並ぶ」のを楽しみにしていると語りかけた。タッグ結成を呼びかけたのだ。ずずの答えはNO。今は「ジュリアvs鈴季すずの物語」を続けたいと言う。タッグを組んだら、それは新しい物語の始まりになるとすずは感じたのだ。
「負けっぱなしで今の物語を終われないでしょう。ジュリアに勝って赤いベルトを巻いたら“組んでやってもいいかな”って言えそうですけど」
ただ試合直後にジュリアから手を差し出され、握り返してはいる。
「悔しいけどジュリアは強かった。それは認めます。だから握手しました」
2人の過去、2人の物語。それがあってのジュリアvs鈴季すずだった。少なくともこれまでは。しかしこれからは違ってくるだろう。予備知識なしで、その場で見てすぐに「この試合はただごとじゃない」と分かる、ジャンルを代表する名勝負を何度も展開していくはずだ。ジュリアと鈴季すずは、そういうレベルのライバルになった。《つづく》
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