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「ジュリアvs鈴季すず」はなぜ“最高に映える”タイトルマッチだったのか? 試合直後の“姉妹”が明かしたそれぞれの「25分4秒」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2023/02/11 11:04

「ジュリアvs鈴季すず」はなぜ“最高に映える”タイトルマッチだったのか? 試合直後の“姉妹”が明かしたそれぞれの「25分4秒」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

2月4日、ジュリアと鈴季すずのタイトルマッチが終わると、2人は互いの手を握った

花道での攻防も…タイトルマッチは激しい一戦に

 リーグ戦の15分一本勝負から、タイトルマッチの30分一本勝負。時間だけでなく闘い方も変わった。すずによると、リーグ戦では「気持ちが先走ってお客さんをまったく意識できなかったです」。だからこそ、この2人にしかできない試合になったとも言える。開始直後の張り手に始まり、最後はすずがジュリアをひたすら殴り続けた。ジュリアはそれを受け止めた。

「(スターダムにきた)すずは怒ってましたね。でも私にとってのすずはずっと変わらない、愛おしくてたまらない存在です。すずにどれだけ恨まれても憎まれても、私にはそういう感情がまったく湧かない。すずには何をされても何を言われても、全部受け止めようと思ってました」

 ジュリアはそう振り返っている。だがタイトルマッチでは、一転して大会場に映える闘いになった。グラウンドの攻防から始まり場外戦、花道ステージでの攻防。すずはマットがなく固いエプロン部分でパイルドライバーを放つ。ジャーマンスープレックスはロコモーション式の2連打に加えコーナー上から雪崩式でも。そこからブリッジして雪崩式ジャーマンスープレックス“ホールド”にまでもっていった。

 激しく、かつアイディアをこらし、体を張りまくる試合だ。タイトルマッチらしいスケールの大きな闘いと言ってもよかった。“2人の物語”を、そこまで昇華させる力がジュリアとすずにはあった。

 信頼関係も欠かせなかった。すず曰く「ジュリアには何しても大丈夫だなと。コーナートップからの雪崩式ジャーマンなんて、ようやらんです(笑)」。

「自信しかない」すずが歩んできた道

 試合が決まると、すずは「自信しかない」と言っていた。確かにジュリアは強い。タイトルを奪取した試合を見て、そのカッコよさにジェラシーを感じたとすずは言う。だからジュリアが持つ赤いベルトがほしくなったのだ。同時に、自分がやってきたこともジュリアに負けていないと感じた。アイスリボンでシングル王者になり、フリーとしてはWAVEでも頂点に。男子選手とのデスマッチも大きな経験になった。

「男子と闘うと、体格が違うので単純にパワーを使いますね。常にMAXのパワーを出し続けないと対抗できないんです。もちろんダメージも大きい。ゲームで言うとHPの減りが早いんです。でも打たれ強くもなりましたね。最大HPが増えた感じ。ちょっと顔を殴られたり頭を蹴られたくらいじゃ倒れないです。それにメンタルもタフになりました」

 若く、なおかつフリー。いろいろな部分で「ナメられがち」だったという。けれど言われるがままではやっていけない。「自分はこう思う」、「それはおかしくないですか」と主張することで得たメンタルの強さはリング上でも活きた。

 スターダムでは、年末に6人タッグのタイトルを獲得。そのベルトを持って、大晦日に古巣アイスリボンのリングに上がった。ジュリアにせよすずにせよ、アイスリボンをやめた選手がスターダムで輝いているという現状がある。面白くないと思うファンや関係者もいるだろう。しかしすずはまったく遠慮することなく、スターダムのベルトとともにアイスリボン参戦を果たした。気まずいなんて思うほうがおかしいのだ、と。

【次ページ】 試合中にジュリアが思い出した「練習生時代」

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