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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「ジュリアvs鈴季すず」はなぜ“最高に映える”タイトルマッチだったのか? 試合直後の“姉妹”が明かしたそれぞれの「25分4秒」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/02/11 11:04
2月4日、ジュリアと鈴季すずのタイトルマッチが終わると、2人は互いの手を握った
スターダムの頂点に立ったジュリアに、すずは挑戦表明
“妹”を置いて団体を離れ、裏切りだと批判もされたジュリアは、しかし急激に知名度を上げた。自分の選択が間違っていなかったことを示すためにも、業界最大の女子団体でのし上がるしかなかった。すずがアイスリボンのチャンピオンになった年、ジュリアはプロレス大賞の「女子プロレス大賞」を受賞する。
木村花との抗争、“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム獲得。2021年には日本武道館大会のメインを張った。中野たむとの敗者髪切りマッチに敗れたが、頭を丸めた姿もインパクトを残した。激しい闘いぶりで突っ走る。それは痛みを度外視する全力疾走。その結果、2021年の秋に長期欠場という代償を払うことにもなった。
そして昨年12月29日、両国国技館大会のメインで赤いベルト奪取。ジュリアはスターダムのトップに立った。年が明けてすぐに、すずが挑戦表明する。チャンピオンは「自分からすずを指名しようと思っていた」と受諾。これしかないという初防衛戦が決まった。
一昨年いっぱいで、すずもアイスリボンを退団した。フリー選手のユニット「プロミネンス」の興行でデスマッチをやりながら、スターダムに乗り込む。目的はジュリアとの対戦だった。あの時、自分たちを裏切った“姉”が許せなかった。いや、許せないと思い込んでいた。
「ジュリアのことは嫌いじゃなかった。でも嫌いにならなきゃいけないんだという気持ちで。そういう気持ちでいると、本当に嫌いになってくるんですよね」
ジュリアとすずの“2人の夢”
シングルマッチでの“再会”が実現したのは昨年10月1日。リーグ戦「5★STAR GP」の最終戦だった。結果は時間切れ引き分け。リーグ戦規定の15分一本勝負は短すぎた。
チャンピオンシップは、決着の場としてこれ以上ないシチュエーションだ。しかもビッグマッチのメイン。調印式の壇上、ジュリアは目に涙をため天井を見上げた。
「すず、覚えてるかな。新人時代、お客さん数十人のちっちゃい会場でやってた頃、“いつか2人で大きい会場のメインやろうぜ”って夢を語って……その夢がもうすぐ叶おうとしてる」
ジュリアが語っていたのは、道場兼常設会場での定期戦のことだ。道場の2階には団体事務所がある。彼女たちにとって、そこは日常の場であり夢の原点。アイスリボンは女子としては小さな団体ではなく、後楽園ホールや横浜文化体育館での大会も成功させてきた。ただ今回、2人が対戦したのは横浜文体よりもさらに大きなエディオンアリーナ大阪第一競技場だ。埼玉県蕨市の道場から始まって、ここまできた。