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“あのワリエワのコーチ”に移籍し、批判殺到したイタリア選手の告白「スポーツは政治的ではいけない」「多くのネガティブな反応があった」

posted2023/01/31 17:00

 
“あのワリエワのコーチ”に移籍し、批判殺到したイタリア選手の告白「スポーツは政治的ではいけない」「多くのネガティブな反応があった」<Number Web> photograph by Getty Images

エテリ・トゥトベリーゼのもとへ移籍し、欧州選手権に出場したイタリアのダニエル・グラスル

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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 1月27日、フィンランドのヘルシンキ郊外エスポーで開催されていた欧州選手権で、フランスのアダム・シャオ・イム・ファが初タイトルを手にした。

「とても誇りに思っています。まだ実感がわいていません。ミスもあったけれど、最後まであきらめずに闘いました」と演技後、嬉しさを言葉にした。2位はフリー1位だったイタリアのマッテオ・リッツォ、2度の4トウループなどをきめて健闘したスイスのルーカス・ブリッツシェギがサプライズで3位に入った。

 だがこの大会で、最大の注目の的になっていたのは、イタリアのダニエル・グラスルだった。20歳のグラスルは昨シーズンの欧州選手権で2位となり、初挑戦した北京オリンピックで7位。この大会でもメダリスト候補視されていた。

 グラスルは2022年の夏、コーチを変えてアメリカのボストン郊外に拠点を移したが、12月に出場したGPファイナルの直前に、「ホームシック」を理由にイタリアに戻った。だがファイナルでは不調で6人中6位となり、4年連続優勝していたイタリア選手権でも4位に終わった。そのグラスルが今年の年初めから、モスクワでエテリ・トゥトベリーゼに指導を受けることが明らかになり、世界中のファンと関係者たちを驚愕させたのである。

グラスルの元には批判の書き込みが殺到

 昨年2月に開催された北京オリンピック直後に、ロシアがウクライナへの武力侵略を開始したため、IOC(国際オリンピック委員会)はロシアとベラルーシを国際大会から締め出すことを決定。さらにトゥトベリーゼは今更繰り返すまでもなく、北京オリンピック開催中にドーピング陽性判定が明らかになったカミラ・ワリエワのコーチでもある。先日RUSADA(ロシア反ドーピング機関)がワリエワは北京オリンピックでは過失がなかったと発表し、より一層ロシアに対する批判が高まっていた。

 トゥトベリーゼは、このドーピング事件の中心人物であり、当時15歳だったワリエワの違法薬物摂取の責任があったのではないかと疑惑視されているコーチでもある。案の定モスクワ行きが公表されると、グラスルの元にはファンからの批判のメール、怒りと失望の書き込みが殺到したという。

【次ページ】 グラスルが告白した「トゥトベリーゼに移った理由」

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