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テニスPRESSBACK NUMBER
「うつです。治療しましょう」元世界60位、テニス・伊藤竜馬34歳が初めて明かす”うつ病と診断されるまで”「トレーニングしないと不安が…」
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byHiromasa Mano
posted2023/01/29 17:01
今回、ある決意をもって、自身の現状と身に起きていたことを語った伊藤竜馬。2019年、20年と全豪の本戦に出場してきた伊藤から語られたのは…
美佳さんがそう気付けたのは、彼女の身近な人に、うつ病経験者が居たからかもしれない。その美佳さんの指摘もあり、二人はテニス協会ナショナルチームトレーナーの大瀧レオ祐市氏に、相談を持ち掛けた。
“血液検査でうつを診断する”医師
二人にとって幸運だったのは、大瀧氏がうつに関する書籍を多く読んでいたこと。そして、“血液検査でうつを診断する”という手法を取る医師/医学博士に、大きな関心を寄せていたことだ。
「川村則行さんという、都内にクリニックを開いている精神科医のことを大瀧さんが教えてくれたんです。彼(伊藤)の性格的にも、そういう風に診断してくれる方が良いと思いました」(美佳さん)
川村医師のことを知り、美佳さんも大瀧氏の見立てに賛同する。
かくして伊藤夫妻は、川村医師の下に足を運んだ。
問診票の回答にもひと苦労
クリニックでまず行うのは、問診票の記入である。質問項目は、計63個。「寝付きが悪い」「気力が出ない」などの質問に対し、「ない」「数日」「半分以上」「ほぼ毎日」のいずれかで回答する。
その問診票を書き込むのにも、伊藤は苦労したという。自分がどれに該当するか確信が持てず、美佳さんに「どれだと思う?」と逐一確認した。
実際に対面した川村医師は、伊藤の状況に過度な同調や理解を示す風もなく、事務的に問診を進めていく。少なくとも、伊藤の目にはそう映った。その適度な距離感が、むしろ心地よかったという。
血液検査を受けるかどうかは、本人の意思にゆだねられる。もっとも伊藤には、受ける以外の選択肢は存在しなかった。
うつです。薬を飲んで治療しましょう
果たして、数週間後——。クリニックを訪れた伊藤たちに、川村医師は淡々と告げた。
「かなり数値が低いですね。うつです。薬を飲んで治療しましょう」
その言葉を聞き、伊藤は「理由が分かった。ちゃんと休もう」と思うことができ、「気持ちがすっきりした」という。
2022年1月。“異変”の始まりから、2年以上が経過していた。
<後編へ続く>