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「肩の骨が浮いてほっぺたに当たるんです。ビヨーンって」坂口智隆が語るケガとの壮絶な闘い 自由契約、移籍、引退…今明かす決断の裏側 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byIchisei Hiramatsu

posted2023/01/23 11:02

「肩の骨が浮いてほっぺたに当たるんです。ビヨーンって」坂口智隆が語るケガとの壮絶な闘い 自由契約、移籍、引退…今明かす決断の裏側<Number Web> photograph by Ichisei Hiramatsu

「最後の近鉄戦士」として昨シーズンまで現役生活を全うした坂口智隆氏

 リハビリは難航した。夏場を越え、バットを振れるようになってもキャッチボールは塁間の距離がやっと。そんな状態のまま、シーズン終了間際にDHとして一軍の試合に出場し復帰を果たしたが、肩の状態は回復しないままだった。

「にっちもさっちも行かなくなって、本格的なウエートトレーニングを取り入れたんです。それまで僕は自重トレーニングにこだわっていたんですが、もうどうにもならなくて、一か八か、もう痛めてもいいという覚悟でデカい筋肉を鍛え出したら、そこから回復が進んでいきました」

 とはいえ、右肩に何も痛みを感じず投げられるようになったのは、怪我から3年後の2015年シーズンのことだという。

「その後も、肩をかばっていたのか肘を痛めたり、腰にもきたし、急にガタガタきたんですよ。ただ、これが自分の体を見つめ直すいい時間にはなったと思っています。それまでの自分は、怪我をしても湿布を貼っておけば治る、くらいの感じでしたから。前向きに捉えれば、あの時怪我をして意識が変わったことで、20年プロでやれたのかもしれません」

「朝起きて痛みがあったら」…眠れない日々

 怪我との壮絶な戦いは、現役終盤に至るまで続いた。ヤクルト移籍後の2019年には春先に死球を受け左手親指を骨折。2021年には自打球を受けて右膝の膝蓋骨の剥離骨折が判明し、離脱を余儀なくされた。

「肩を怪我して以降はずっと怪我と戦っていた気がします。左手に当たった時は(患部が)切れて血まみれ。見たくもなかったですけどね。本当に思うようにはいかないことばかりでした」

 三十代後半は、私生活の多くを治療やケアに費やしていたという。

「朝起きて一番初めに考えるのが“今日は体のどこが痛いか”ということでした。ベッドの中で体を少しずつ動かしてみて、ちゃんと動くかどうかチェックするんです。ここが痛いと感じたら、球場に行く前にまず、どこをケアしてどこをトレーニングしなければいけないかを考える。そんな毎日でした」

 不眠にも悩まされた。

「朝起きて痛みがあったらどうしよう……そう思うと眠れなくなる。睡眠にいいとされるものは全部試しました。枕や寝具、ホットミルクやいろいろな種類のお茶、もちろんヤクルト1000も飲みました。(現役引退した)今は爆睡しています。朝起きて痛くても別に構わないですからね」

【次ページ】 ヤクルト移籍でびっくりしたことは…

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